紙上講演 ニッセイ基礎研究所上席研究員 伊藤 さゆり氏

ニッセイ基礎研究所上席研究員・伊藤さゆり氏
 2017年どう変わる世界と日本

  米政権対応経済強化が鍵

 山陰中央新報社の石見政経懇話会、石西政経懇話会の定例会が7、8の両日、浜田市と益田市であり、ニッセイ基礎研究所上席研究員の伊藤さゆり氏(51)が「2017年 どう変わる世界と日本」と題して講演し、米国のトランプ政権誕生で激動の年になると展望した。要旨は次の通り。

 トランプ氏は政権発足後、矢継ぎ早に保護主義的な公約を実行に移すなど米国内は揺れており、日本も付き合い方を慎重に考えなければいけない。安倍晋三首相が10日に訪米するが、首脳会談でのメッセージや立ち位置に世界の注目が集まる。

 欧州では、独仏など主要国で国政選挙があるが、欧州統合などを推進してきた既存の政治勢力に対し、経済面や難民問題への不満から批判が広がり、トランプ政権の誕生で反対勢力が勢いづいている。選挙で、想定外の結果も懸念される。

 中国経済の台頭で、米中の格差は縮まっている。米国の貿易赤字のほぼ半分は対中国。トランプ氏には、中国の躍進で不利益を被っているとの認識があると思う。中国では5年に一度の共産党大会があり、米中関係の変容も要注目だ。

 トランプ氏は、米国と同程度の経済規模を持つ欧州連合(EU)の存在も気にしている。これまでの大統領は、欧州統合を支持する立場だったが、トランプ氏はEUを「ドイツの乗り物」と表現した。英国のEU離脱をたたえ、他国にも推奨する発言は衝撃を与えている。

 一方、トランプ氏が打ち出した税制改革や歳出拡大、規制緩和への期待感で世界経済は比較的、底堅く推移するだろう。ただ、米国の財政赤字の拡大や金利上昇、ドル高圧力など先行きにリスクはある。

 トランプ氏が自国に有利な経済交渉を進めようとする中、日本にとって、環太平洋連携協定(TPP)は棚上げになったが、欧州との経済連携協定(EPA)の交渉は生きている。これをまとめ、日本は多国間貿易を重視するというメッセージを発することが大事。国内経済をいかに強くしていくかが日本の課題だ。

2017年2月9日 無断転載禁止