日米首脳会談/基本的な価値の共有を

 安倍晋三首相とトランプ米大統領は初の首脳会談で、同盟関係を強化していく方針を確認、貿易・投資分野での閣僚枠組みの新設で合意した。

 トランプ氏がこれまで在日米軍駐留経費の負担増を主張したり、貿易赤字を巡り日本を強く批判したりしていたこともあり、安倍政権幹部は「安全保障や経済で議論の出発点をつくることができた」と評価する。

 基本認識さえ確認できないという混乱に陥らなかったという点では評価できる。しかし、日米共有の基盤が「価値」から「利益」へ変質していくのではないかという懸念も感じる会談だった。

 外交で安倍首相が最重視してきたのは自由、人権などの「基本的価値の共有」である。トランプ政権は現在、イスラム圏7カ国からの入国を禁じる大統領令など、これらの価値を脅かしかねない施策を展開している。

 両首脳は共同声明で「同盟はアジア太平洋地域における平和、繁栄および自由の礎」とうたった。安倍首相が本当に同盟を「自由の礎」として強化していくならば、基本的価値を巡る諸課題についても、積極的に触れていくべきだろう。

 「自由世界第一、第二の民主主義大国を結ぶ同盟に、この先とも、新たな理由付けは全く無用です。それは常に、法の支配、人権、そして自由を尊ぶ、価値観を共にする結び付きです」

 2015年4月、米連邦議会で行った演説で、安倍首相はこう述べた。

 安倍首相はこの演説に限らず、基本的価値の共有を外交の基本方針とすることを再三表明している。共同声明と首脳会談でも言及するべきではなかったか。

 トランプ氏が発した入国禁止の大統領令は、米国内だけでなく国際的な批判、反発を招いている現状がある。日本には自由、人権を堅持しながら、両国関係をリードしていく姿勢が求められている。

 安倍首相は大統領令について「内政問題」として首脳会談でも取り上げず、共同記者会見でもこの問題を念頭に「違いがことさら強調されることで、対話が閉ざされてしまうことを恐れる。それは国際秩序に挑戦しようとする者たちが最も望んでいることだからだ」と主張した。

 他国がとやかく言う問題ではなく、今後の会談が実現できなければテロリストの思うつぼ、という考え方は理解できる。しかし、一方で、各国が国籍を理由に移動の自由を制限し始めれば、基本的価値が保障されない世界が出現、民主主義国家同士で対立が深まることになり、テロリストに利用されかねないという側面もある。今後、状況を分析し、対応策を講じてほしい。

 トランプ氏は「利益」を主張し「取引(ディール)」を重視する。共同記者会見で、工場を米国に戻す企業に対して「よくしてくれたので私も彼らによくしていく」と明言した。また、入国禁止問題に関しても「米国を愛し、良き友人となる方々」と入国条件を挙げた。

 米国は超大国であり、「利益を基準にした取引」によってのみ達成する「平和と繁栄」はあり得ない。日本はあくまで米国と「対等」な関係に立ち、世界秩序の構築に貢献しなければならない。

2017年2月13日 無断転載禁止