憧れのアメ車は

 高度成長期に育った子どもの多くがそうだったように、自動車好きだった。小学校高学年の頃には、国道ですれ違う車の名前はすべて言えた。そのころ憧れの車は何といってもアメ車だった▼一番はフォードリンカーンコンチネンタル。後部トランクのスペアタイヤの出っ張りが個性的だった。スティーブ・マックィーンが映画で乗り回した同社のマスタングにも痺れた。そのフォードは昨年、日本市場から撤退している▼日米首脳会談が開かれた。同盟強化を掲げる両国。トランプ大統領は紳士的だった。しかし、日本でアメ車が売れない不満を解消したわけではない。アメ車が売れないのは日本市場の閉鎖性からだ、という誤解も抱いているらしい▼アメリカ製品への印象は悪くない。アメ車も昔と比べて故障は少なくなった。日本に合わない左ハンドルばかりで価格も本国より高いのだが、売れない一番の理由は、憧れを抱かせるほどの往時の輝きが失われたからではないのか▼日本車の米国輸出関税は2・5%、アメ車の日本輸出は関税ゼロだ。日本企業のアメリカへの巨額投資も、実業家の大統領が知らないはずがない。米国内の失業対策は理解できるが、自動車を貿易障壁の文脈で語られては堪(たま)らない▼会談は安全保障分野で日本側が安(あん)堵(ど)し、経済分野はひとまず衝突回避という、つかみ所のない結果に終わった。両国関係の隅々まで世界が注目している。本気でこれからどう付き合うかは、ゴルフ帰りの両首脳に聞かせてもらうしかない。(裕)

2017年2月13日 無断転載禁止