マイナス金利1年/政策を見直す時期では

 日銀がマイナス金利政策を始めて間もなく1年になる。当初強調された景気への効果は一部にとどまり、物価押し上げの力が認められない半面、年金の運用難や消費者心理の悪化など負の影響がむしろ目立つ。

 日銀は昨年9月、その副作用を軽減し、長期金利の下がり過ぎを防ぐ枠組みを導入したが、「お金をたくさん供給して物価を上げる」との基本姿勢は変えていない。

 黒田東彦総裁の下で、今の大規模金融緩和がスタートして間もなく4年になる。目標達成に程遠い大規模緩和とマイナス金利を見直すべきときではないだろうか。

 併せて実施されている上場投資信託(ETF)などの資産買い入れ政策にも、株価をはじめ市場の価格形成をゆがめる弊害が目立つとして、疑問の声が出ている。

 黒田緩和が2013年4月に始まって以来、資産購入の代表的な対象はETFと不動産投資信託(REIT)だ。ETFは日銀が上場株式を買うのと同じ効果があり、年1兆円のペースで買い増すと表明。REITは不動産市場へ資金を供給する機能があり、こちらは年300億円の購入増を決めた。

 いずれも株式や土地・不動産といった資産の価格押し上げになるため、これらを持つ個人や企業が得をしてお金をたくさん使うようになると想定。それが国内の景気を上向かせ、結果として物価上昇と脱デフレにつながるとの理屈だった。

 しかし4年間を振り返ると、物価への効果を明確に確認することはできなかった。目標とする消費者物価(生鮮食品を除く)が足元まで10カ月連続で前年比マイナスとなり、16年年間でも前年比0・3%の下落だった点が証明している。

 株価や不動産価格の値上がりが一般物価の上昇につながる、との理屈通りにいっていない、と言わざるを得ない。

 日銀の姿勢が問題なのは、これら資産購入策の物価効果が認め難いにもかかわらず、その購入額を増やし続けている点だ。

 当初1兆円だったETFは段階的に増額され、昨年7月からは「英国の欧州連合(EU)離脱決定により海外経済の不透明感が高まった」として年6兆円に。REITはこの間、当初比3倍の900億円に増額された。

 この結果、黒田緩和前の12年末に約1兆5千億円だったETFの購入残高は、今年中に15兆円程度へ膨らむ見通しだ。日本のETFの市場規模は約20兆円であり、いかに日銀の存在が大きいかが分かろう。

 最近では、日銀が1回に700億円も買いを入れるため、それまで下げていた株価が上昇へ転じるといった不自然な動きがたびたび生じている。

 これでは株価を重視する安倍政権のための政策と、市場から見られかねない。ETF増額に昨年反対した日銀審議委員の一人が「株価を目標にしている(政策)との誤ったメッセージになる」と懸念した通りだ。

 大規模緩和とマイナス金利は、国債発行の負担感をなくしたことで、政府の財政規律まで緩めた面もある。日銀は金融政策をあらためて再検討すべきではないか。

(了)

2017年2月14日 無断転載禁止