益田のタイガーマスク

 漫画「タイガーマスク」の最終回で主人公の伊達直人は道路に飛び出した子どもをかばい、車にはねられ死亡する。描かれたのは1971年。「交通戦争」の真っただ中である▼70年代初めに1万6千人を超えた交通事故の死者数は昨年、67年ぶりに3千人台になった。道路整備や罰則強化などが背景にあるだろうが、痛ましい事故は絶えない▼益田市の交差点で酒気帯び運転の車が小学生の集団登校の列に突っ込み、見守りボランティアの三原董充(ただみつ)さん(73)が亡くなった事故から半月が過ぎた。地域では追悼の行事が開かれ、事故防止に向けた機運が高まっている。ボランティア仲間の日比勇さん(74)は「いま一度、地域全体で見守る体制をつくりたい」とする▼三原さんは34年前に小学生の次女を交通事故で失い、孫の通学を機に十数年前から活動していた。付き添った男児の体を突き飛ばして助け、はねられた後も「大丈夫か」と気遣ったという▼伊達直人は事切れる間際に最後の力を振り絞り、マスクを川へ投げ捨て自らの正体を守り抜いた。三原さんも救急車に乗るまで痛みを口にしなかった。「男の子を動揺させたくないという父の使命感からでしょう」と長女の摩弓さん(42)が明かす▼登下校中の児童や、付き添いの大人が巻き込まれる事故が全国で相次ぐ。飲酒運転は論外だが、ハンドルを握る一人一人が子どもの姿を見掛けたら速度を落とす意識を心掛けたい。小さな積み重ねがタイガーマスク運動のような広がりにつながる。(玉)

2017年2月14日 無断転載禁止