天皇退位意見集約/国民に見える議論望む

 天皇陛下の退位を実現する法整備を巡り自民党は「陛下一代限り」の特別法が望ましいとする党見解をまとめた。公明党も足並みをそろえ、近く衆参両院の正副議長による意見聴取でそれぞれ報告する。野党は日本維新の会が特別法を支持しているが、民進党や共産党は皇室典範改正を経て退位を制度化するよう主張する構えだ。

 3月中旬に国会としての見解が示される見通しで、それに向けて与野党の協議が本格化する。ただ民進党は典範改正による女性宮家創設なども求めており、すんなり決着しそうにはない。このため与党内では典範に特別法の根拠規定を置く案が検討されている。制度化に近い形を取り、説得材料にする狙いだろう。

 さらに女性宮家の将来的な論議について合意文書を交わす案もあるという。こうした中で活発な議論は影を潜めつつある。自民党では役員会の幹部だけの懇談会で党見解が話し合われ、所属議員は文書で意見を出すしかなかった。退位した天皇の呼称や活動を検討する予定だった有識者会議の会合も当面延期された。

 「静かな環境」を整えるためとはいえ、議論を棚上げして、水面下の調整で妥協を図りたいとの思惑も見え隠れする。しかし、いま求められているのは国民に見える議論により民意をくみ上げ、新たな天皇制の枠組みに反映させていくことだ。

 有識者会議は先月、天皇退位を巡る論点整理を公表した。制度化には数多くの課題があることを強調し、一代限りの特別法制定を目指す政府の方針を後押しする内容だった。これを受けて各党は党内の意見集約に入ったが、自民党は幹部だけの懇談会で早々に特別法支持の結論を出した。党内には制度化を訴えたり、皇室の安定的な存続に向けた議論を求めたりする声もあったが届かなかった。

 あとは、民進党の説得である。天皇の地位は「国民の総意」に基づくと憲法は定めており、特別法で押し切った場合、その趣旨に反する恐れがあるからだ。そこで典範に特別法の根拠規定を置く案が出ている。本則か付則か、「退位」という文言を盛り込むかまでは固まっていないようだが、いずれにせよ全ての天皇に退位の道を開くことになり、民進党も受け入れやすいとみている。

 女性宮家を巡る合意文書も説得材料になるだろうが、与野党協議が水面下の駆け引きに流れてしまう懸念を拭えない。公開の場で有識者会議の論点整理を踏まえて議論を交わし「全ての天皇を対象とした要件の規定は困難」などとした点をきちんと検証して、結論を出していくべきだ。

 また皇族減少に対応するため、女性宮家創設などが避けては通れない検討課題になりつつある。過去に小泉純一郎首相の下で有識者会議が女性・女系天皇を容認する報告書をまとめ、旧民主党も女性皇族が結婚後も皇室に残る女性宮家の創設を柱とする典範改正を検討した。だが「男系男子」による皇統を重視する保守層の根強い反対もあり、いずれも立ち消えになった。

 今回、仮に与野党が将来的な議論で合意するのであれば、課題の先送りに終わらないよう議論の場を設け、具体的なスケジュールまで詰めることが求められる。

2017年2月15日 無断転載禁止