専業主婦リスク

 愛読書に群ようこさんの「れんげ荘」がある。主人公のキョウコは有名広告代理店を45歳で早期退職し、シャワー、トイレ共同の築50年のアパートに引っ越して、月10万円で暮らす生活を始める▼働きづめで55歳で急逝した父の死をきっかけに、生き方を見つめ直したキョウコ。貯金残高から「無理をしなければ30年は暮らせる」とそろばんをはじいた。全てを吹っ切り、自分が選んだ道に進むその心意気に憧れる▼春間近、転職や退職で新しい道に踏み出す人がいる。人生は一度しかなく、新たなスタートを応援したいが、先日、若い知人からは少しさみしい気持ちになる話も聞いた。「仕事が面倒だから専業主婦になりたい」と▼激務や人間関係のトラブルから解放され、婚期や出産適齢期を逃すリスクを回避する生き方だと知人は言う。思い描いた形になればと願う一方で、リスクを高める面もあるように思う▼出雲市では、ドメスティックバイオレンスの相談が急増。夫が正社員、妻がパートなどで夫婦間の経済格差が大きいため逃げられず、幼い子がいるため暴力に耐える若い女性が多いという▼内閣府の昨夏の調査で「夫は仕事、妻は家庭」の考えに賛同する20代女性は4割に上った。それぞれの価値観だが、「働くリスク」を感じる女性が多い社会の裏返しではないか。長時間労働や妊娠や出産を理由とする職場での嫌がらせのニュースも絶えない。働くことをためらわせる社会をつくった現役世代の一員として反省したい。(衣)

2017年2月17日 無断転載禁止