共謀罪と捜査/プライバシーへの配慮を

 犯罪を実行する以前の計画段階で処罰できるようにする「共謀罪」を下敷きにした「テロ等準備罪」は、これまでの国会での質疑を通じて政府が今国会提出を目指す法案の論点はほぼ出そろった。

 テロの未然防止を狙いとするなら、ハイジャック防止法の予備罪などテロ行為の着手前に取り締まれる現行法の規定でも対処は可能ではないか。犯罪とは無関係の市民団体などが準備罪の適用対象とされる「組織的犯罪集団」とみなされる恐れはないか。そもそも国連の国際組織犯罪防止条約の締結に新たな立法は必要か-などである。

 ただ準備罪の創設で警察などの捜査がどう変わり、それが社会にどのような影響をもたらすかは、国会でもあまり議論されておらず、国民には見えにくい部分がある。

 警察が電話やメールの内容をチェックする通信傍受や衛星利用測位システム(GPS)端末を用いた車両の追跡などが増えて「監視社会になる」と危惧する人もいる。

 新たな手法の導入も検討中とされ、仮に準備罪が導入されれば監視網は一層拡大する可能性もある。プライバシー侵害の懸念をどう払拭(ふっしょく)するか、議論してもらいたい。

 組織犯罪処罰法改正案がこれまで3度廃案になり、日の目を見なかった共謀罪は犯罪の合意を罰するが、テロ等準備罪では合意に加え下見などの準備行為がないと処罰できないと政府は説明する。

 ただ、計画段階で罰するのは変わらず、計画をあぶり出すには特定の団体や人物を常時監視下に置くことが必要になる。

 その重要な捜査手法となる通信傍受は、昨年12月施行の改正法で薬物や銃器、集団密航、組織的殺人の4類型だった対象犯罪に組織性が疑われる詐欺や窃盗など9類型が追加された。傍受への第三者の立ち会いも必要なくなり、捜査が容易になった。

 傍受の対象犯罪が大幅に増えるが、犯罪防止条約が共謀罪の適用対象とする「懲役・禁錮4年以上」の罪は676あり、政府は半分以下に絞り込むとしている。

 広域窃盗事件などでGPS端末を対象者の車にひそかに取り付け、追跡する捜査も広く行われている。「裁判所の令状なしにプライバシーを侵害された」と訴える事例が相次いでいる。

 検察側は「尾行や張り込みの補助的な手段」とし、令状は必要ないと反論してきた。地裁や高裁では「違法」「妥当」と判断が割れるケースもある。

 近く最高裁が統一判断を示すが、位置情報が交友関係や思想・信条、嗜好(しこう)などの個人情報につながることを考えれば、対象犯罪を絞り込む法整備が求められよう。

 スマートフォンの位置情報の取得には令状が必要だが、15年からは本人に通知しなくて済むようになった。

 さらに街中にある防犯カメラの画像から顔を取り出し、登録してある特定人物の顔と瞬時に照合する技術も実験的に導入されている。プライバシーを侵害しないよう厳格な運用が求められる。

 テロを未然に防ぐには十分な監視態勢が必要だ。そのためには監視の網の目は細かくならざるを得ないが、プライバシーとの兼ね合いを慎重に議論しなければならない。

2017年2月17日 無断転載禁止