二つのかけ算

 朝の連続ドラマに子供服の偽物が出回る話があった。「安い方がありがたい」と買った主婦たちが「洗濯したら縮んでしもうた。お金返して」と、偽物業者に詰め寄る場面まで描いていた▼苦情の一つも言えただけましだ。安さにつられてネット通販でブランド衣料を買ったことがある。中国語の箱に入って届いたのはペラペラ素材、洗濯したら縫い目がほつれた。「安物買いの銭失い」。苦情を言おうにも相手は不明▼「極端に安い」「あなただけに得する話がある」「特別な入手ルートを持っています」。うまい話には裏がある。どころか、多分に怪しい話でも、「万に一つの本物かも」の心理に付け込まれ、うかうかと乗ってしまうのが人情だ▼いろんな投資話も聞いた。体をなでるだけで病気が治る純金の棒、戦時中に関東軍が満州から持ち帰った魔法の鉱石、聞き慣れぬ通信会社、必ず儲(もう)かるリゾートマンション…、荒唐無稽の話から時流をとらえた財テク話まであった▼こちらに持ち合わせがないと知ると、さっさと引っ込められたのだが、まさに「世に盗人の種は尽きまじ」だ。今では手口も巧妙になり、有名IT企業をかたった偽メールでネットに詳しい若者でさえ「フィッシング詐欺」に遭う▼高齢者を狙う医療費還付や名義貸しなどの特殊詐欺の被害額は、昨年山陰両県で2億5千万円。若者が狙われ、分別盛りもいい鴨(かも)にされ、高齢者はさらに危ない。本人の心がけと周囲の声かけ。「二つのかけ算」で詐欺の被害を防ぎたい。(裕)

2017年2月18日 無断転載禁止