隠岐での島体験/地域医療の実践学ぶ場に

島根県立大出雲キャンパス副学長  山下 一也

 島根県立大出雲キャンパスでは現在、看護学部の講義「島根の地域医療」、大学院の講義「しまねの健康と長寿」などを設け、積極的に島根県の離島・中山間地に出掛け、地域医療の課題解決型学習法を導入したフィールド学習を展開している。

 県内多くの地域の中で、特に隠岐の島町と密接に連携している。隠岐の島町とは2015年7月、地域貢献の取り組みや人材育成、交流などに関する連携協定を締結し、同年9月には出雲キャンパスのタウンミーティングを開催した。

 入試では看護学部、別科助産学専攻ともに、いわゆる「隠岐枠」、看護学部看護学科推薦入試(地域特別A、定員2人)と別科助産学専攻推薦入試(石見・隠岐地域、同4人)を設け、隠岐出身の人材流出を防ぎ、再び隠岐地域で働いてもらう仕組みをつくっている。

 隠岐の島町でのフィールド学習では、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少が著しく、看護職や介護職の確保さえままならない状況の中で、総合医療から専門医療まで島内でほぼ完結できる「地域包括ケア」を実践している現状を学べている。学生が将来、どの医療現場に就職しても隠岐での学習は役立つと思われる。

 しかし、この5年間のフィールド学習での経験から、まだ学生たちが「医療」と「生活」の両方の視点を持ち、全体を見通した支援ができる看護への理解が不十分であると感じていた。そこでこのたび、地域の文化や住民と直接触れ合いながら、「普通の生活」を体験できる宿泊の場を作ってもらう計画が隠岐の島町で始まっている。

 学生には、これまでの民泊型フィールド実習でできなかった地域の現状や離島地域における地域医療について、より一層理解を深めてもらえると思っている。さらには単に知識の獲得だけでなく、人間力やコミュニケーション力を鍛える場になると期待している。

 大学生が離島でフィールド学習などを行い、大きな成果を挙げているところとして、既に離島医療の先進地である長崎県立大がある。長崎県立大では、全学部(3学部7学科)共通科目「長崎のしまに学ぶ」、2年次の演習科目「しまのフィールドワーク」で壱岐、対馬、五島、上五島に分散し、離島について学習しているという。担当者によると、学部を超えてさまざまな学生が島生活を体験し、多くの成果が得られているとのことである。

 ところで、このように隠岐の島町で学生が勉強するだけでなく、出前講座、インターネットを通じた公開講座を開き、島民の皆さんに生涯学習などを提供することも計画している。

 本学では、15年10月に島根県立大学出雲キャンパス支援ネットワークを立ち上げてもらい、出雲市駅前にサテライトキャンパスを設置。昨年から一般市民向けの健康市民大学(前期後期)や、小学生高学年向けの論語教室などのコンテンツを提供し、確実に実績を重ねつつある。このノウハウを活(い)かし、隠岐の島町、隠岐病院と共同で島民の皆さんにさまざまな社会貢献ができたらと思っている。

 今後、島根県立大出雲キャンパスでは、さらに隠岐の島町と連携を深め、ウィンウィンの関係を築くことができたらと願っている。そして都会志向になりがちな今の学生たちに、「普通の生活」を体験してもらい、隠岐の島町でのフィールド学習を「地域医療マインド」を醸成する場にしたいと考えている。

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 やました・かずや 医学博士、専門分野は神経内科、神経心理学。島根医大医学部卒業後、1991年にカリフォルニア大デービス校神経科研究員として留学。94年から津和野共存病院院長、島根医大付属病院第3内科講師、島根県立看護短大教授などを経て、2012年4月から島根県立大出雲キャンパス副学長。

2017年2月19日 無断転載禁止