世事抄録 袖触り合うも多生の縁

 先頃、半年ぶりにサンライズ出雲号で上京した。早朝の東京駅に着き、会議まで時間があったので中日前日の両国国技館へ出かけた。両国駅で下りると国技館周辺は人波でにぎやか、トントコ櫓(やぐら)の招き太鼓の音や力士の幟(のぼり)がにぎやかにはためき相撲気分横溢(おういつ)。専用口には風呂敷包みを小脇に抱えた着流し姿のお相撲さんたちが足早に入っていく。

 そのうち一人に思い切って話しかけた。所属部屋は何と隠岐の海と同じ八角部屋。しこ名は北斗誉、福島出身の序二段で、前に隠岐の海の付け人だったという。爺(じい)が島根県人だからか存外気安く応じてくれ、陰ながら奮闘を祈ると言い添えた別れ際、鬢(びん)付け油の残り香が漂った。

 翌晩10時、東京駅発サンライズ出雲号蚕棚式の「のびのびシート」に酩酊(めいてい)気分で落ち着く。隣のおじさんに話しかけると列車を乗り継いで熊本へ帰るとのこと。聞けば某有名大学哲学科を卒業、パリのソルボンヌ大学で仏語を学び、仏人のガイドをしているそうで底の浅い爺は心底恐縮。大雪で岡山県の新見付近で立ち往生し、やっとたどり着いた米子駅。特急「おき」に乗り換えるというこの方と別れた。聞いた名前を忘れてしまい、がっかりしていたらこの方が再登場。下車せずとも接続に支障なかったそうで、松江駅まで無聊(ぶりょう)が慰められた。縁とは有り難いものだ。

    (松江市・変木爺)

2017年2月19日 無断転載禁止