共謀罪/国民の懸念の払拭を

 「共謀罪」の構成要件などを見直した「テロ等準備罪」の適用対象となる「組織的犯罪集団」について法務省は、もともと正当な活動をしている団体であっても目的が一変した場合には犯罪集団とみなされ、処罰の対象になり得るとの見解を示した。

 政府は繰り返し「一般の人が対象になることはあり得ない」と説明してきた。しかし、野党の追及に対し金田勝年法相は「団体の性質が一変したと認められなければ、組織的犯罪集団と認められることはない」と答弁。対象になり得ることを否定しなかったことで法務省が統一見解を求められ、衆院予算委員会の理事懇談会に文書で提出した。

 これにより、団体の活動に変化が見られた場合は、捜査機関の判断で市民団体や労働組合、会社にも網が掛けられることになる。これまでの政府の説明と矛盾する部分がある。

 野党の攻勢に対して、安倍晋三首相は「団体が犯罪集団に一変した段階で(構成員が)一般人であるわけがない」との見解を示した。だがそれでは「市民団体なども対象になる」と猛烈な批判と反発を招き過去に3度廃案になった共謀罪法案と変わらなくなり、国民へ十分な説明が必要になるだろう。

 問題は、恣(し)意(い)的な判断により普通の団体がテロ等準備罪の対象となる余地が残るかどうかだ。憲法が保障する表現の自由や集会結社の自由といった民主主義社会の基盤を損なうことにならないか、といった点だ。

 テロ等準備罪の新設を柱とする組織犯罪処罰法改正案の今国会提出を目指す政府は度々「共謀罪とは別物」と強調している。共謀罪で処罰される犯罪の合意に加え下見などの実行準備行為がないと逮捕できないとしたほか、適用対象は単なる団体ではなく暴力団など組織的犯罪集団に限定されているから一般の人は対象にならないとした。

 野党から組織的犯罪集団の定義をただされると「団体の結合の目的が犯罪を実行することにある団体に限られ、普通の団体、会社、労働組合などは犯罪主体から除外される」と説明。「正当な団体がたまたま罪を犯したとしても、犯罪集団と認められることはない」とも述べている。

 実際、過去に普通の会社が犯罪集団に一変したと認定された例がある。会員制温泉リゾートクラブを運営する会社が経営難に陥り、返還できないのに預託金を集めたとして、実質オーナーが通常の詐欺罪より重い組織的詐欺の罪に問われた。オーナー側は「多くの社員に詐欺の意識はなく、組織的詐欺には当たらない」と争った。

 最高裁は2年前に、オーナーら上層部の決定で会社が「詐欺を実行するための組織」に変わったと認定。詐欺に加担している認識のない社員がいても問題にはならないとして、オーナーの上告を棄却する決定をした。

 政治的な主張を表に出して活動する団体が、ある時期から犯罪集団に一変したとみなされ、テロ等準備罪の適用対象となる恐れを指摘する声は根強い。政府はこれまでそこから目をそらすような説明を続けてきたのではないか。そうした国民の懸念をどう払拭(ふっしょく)するか、今後の議論を注意深く見守りたい。

2017年2月20日 無断転載禁止