情熱が伝わってこない

 繊維販売や不動産で財をなした実業家で、足立美術館(安来市)を創設した足立全康さん(1899~1990年)。横山大観コレクションと日本庭園を二枚看板に、全国に知られる美術館を一から築き上げた▼その情熱と行動力は逸話に事欠かない。美術館に関するアイデアを思いつくと、夜中だろうが早朝だろうが知人に電話をかけ、意見を求めた。来館者が庭から館外の山を見て「あそこに滝があればいい」と言ったのを聞くと、山ごと購入した▼全康さんがもし生きていたら、隣県のドタバタぶりをどう見るだろうか。16日に開かれた鳥取県立美術館の整備基本構想検討委員会は、県民アンケート結果を基に建設地を絞り込もうとしたが、意見はまとまらず、県教育委員会にげたを預けた▼アンケートでの最多支持は倉吉市営ラグビー場で28・5%。2位の旧県運転免許試験場跡地(北栄町)、3位の鳥取市役所跡地とは約3%の僅差で、倉吉以外の候補地を推す委員は「ラグビー場は7割から支持されていない」などと主張。絞り込みに異を唱えた▼こんなことなら、最初から各論並記で県教委に報告すればよかった。県費を投入したアンケートの実施に徒労感が残る▼全康さんのビジョンは実に明確。名画と名園を備えた世界的な美術館を古里につくろうとした。鳥取県立美術館の中身で分かっているのは、鳥取ゆかりの作品が収まることぐらい。事業を遂行する県や県教委からは、残念ながら全康さんのような熱い思いが伝わってこない。(示)

2017年2月20日 無断転載禁止