サイバー攻撃の脅威/民主主義の基盤揺るがす

 ロシアとの関係改善に意欲を示すトランプ米大統領が就任して以降、昨年の米大統領選にロシアがサイバー攻撃で干渉したとされる問題がなおざりにされている。だが、攻撃が事実ならば民主主義の基盤を揺るがす許せない行為だ。重大な問題であり、忘れるわけにいかない。

 昨年12月にオバマ政権は、米大統領選でロシアがサイバー攻撃を仕掛けていたとして米国駐在のロシア外交官35人の国外退去処分など厳しい制裁を発令した。

 トランプ氏は当初、サイバー攻撃について「ばからしい」と一蹴していたが、次期大統領として1月6日に情報機関を統括する国家情報長官から詳しい報告を受けると、一般論としてロシアや中国からのサイバー攻撃が常態化していることは認めたが、「選挙結果には全く影響ない」と強調した。

 この際、根拠となった秘密情報を含まない結論だけの情報機関の報告書が公表された。それによると、攻撃はトランプ氏の当選を望むプーチン大統領が指示し、ロシア軍の情報機関が実行。米民主党のネットワークに侵入してデータを入手し、クリントン陣営が不利になるようなメールなどを、内部告発サイト「ウィキリークス」などを利用して暴露した。

 また、ロシアの影響下にあるメディアを通じ、クリントン陣営を批判するニュースを大量に流したという。

 報告書は、プーチン氏が「米国が主導する自由と民主主義の(国際)秩序を揺さぶることを狙った」との見方を示した。2011~12年にロシアで起きた反プーチンの運動を当時のクリントン国務長官があおったと考え、根に持っているとの分析も示した。

 さらに、ロシアは米大統領選の結果を成功と捉え、米国やその同盟国の今後の選挙で同様の干渉をするだろうと述べている。強い懸念を抱かざるを得ない予測だ。

 国政選挙が今年相次ぐ欧州では、ロシアや一部のハッカー集団が、選挙にサイバー攻撃で干渉しているとの方が強まっている。3月にオランダ下院選、4~5月にフランス大統領選(2回投票制)、秋にドイツで連邦議会(下院)選が予定される。

 3月15日に下院選を控えたオランダのプラステルク内相は、ロシアを含む外部勢力の介入の可能性があるとの考えを示し、票数を操作されないよう投開票を手作業で行うと表明した。これまで電子投開票システムを導入していたが、ソフトに脆弱(ぜいじゃく)性があるため、鉛筆で投票用紙に記入する昔の方式に戻すという。

 「反欧州連合(EU)」「反移民」を掲げる極右を選挙で有利にすることを狙い、サイバー攻撃や偽ニュースの拡散などが行われている疑いが取りざたされている。

 日本でもサイバー攻撃は年々増えている。調査システムを運用する国立研究開発法人・情報通信研究機構(NICT)によると、国内のネットワークに向けたサイバー攻撃関連の通信が16年は前年比2・4倍の約1281億件と過去最高だった。

 日本も対策を強化しなければならない。サイバー時代の脅威に立ち向かうには、有権者も情報をうのみにせず、真偽や隠された狙いを見極める努力が必要になる。

2017年2月26日 無断転載禁止