台湾2・28事件70年/中国は信頼醸成へ対話を

 1947年、日本から台湾の統治を引き継いだ国民党政権が台湾人の抵抗運動を弾圧し、多数を殺傷した2・28事件から70年になる。台北市では、台湾独立志向の民主進歩党(民進党)の蔡英文総統が出席して大規模な記念式典が開かれる。

 事件の背景には、大陸から渡ってきた「外来政権」の腐敗や横暴への台湾人の強い不満があった。今も中台統一を悲願とする中国と、統一を望まない台湾住民の意識差は極めて大きい。

 中国は、台湾は不可分の領土だとする「一つの中国」の原則を主張するが、強引なやり方では、民主化と経済発展を果たした台湾住民の人心を得ることはできまい。

 台湾住民の多くは台湾海峡の平和と安定、中台の現状維持を望んでいる。中国は2・28事件の歴史に学び、「一つの中国」を押し付けず、中台の共生に向けた信頼醸成のため蔡政権との対話を始めるべきだ。

 2・28事件は、台北市内での闇タバコ売りの取り締まりをきっかけに民衆と当局が衝突。全市に暴動が広がり、台湾の主要都市で民衆が官庁や警察を襲撃した。当局の武力鎮圧とその後の摘発により、推定1万8千~2万8千人が殺害された。

 本省人(台湾出身者)と外省人(大陸出身者)の対立の始まりで、外来政権への反発から台湾独立運動が起きる契機にもなった。

 その後、民主化の中で犠牲者の追悼と真相究明が始まり95年2月、国民党政権の李登輝総統が公式に謝罪した。

 蔡氏は犠牲者の遺族との会談で「事件から教訓をくみ取り、和解に向けて民主的で公正な団結した国を造りたい」と述べた。台湾の民主化を誇り、かつての国民党、現在の共産党の「独裁」をけん制した形だ。

 蔡氏は昨年1月の総統選で対中融和路線の国民党候補を大差で破り、5月、総統に就任した。中国は中台が「一つの中国」の原則で一致したとされる1992年合意を認めるよう迫ったが、蔡氏は拒否した。

 このため、中国は対話チャンネルを閉ざし、台湾が外交関係を持っていた国を奪ったり、大陸観光客を減らしたりする露骨な圧力をかけている。台湾が独立に動けば、武力行使も辞さない構えだ。

 だが中国の思惑は台湾の世論とかけ離れている。昨年の統一に関する世論調査によると、「現状維持」が最も多く59%、「独立」は23%、「統一」は10%だった。6割近くが自分は「台湾人」と考えている。

 中国政府も台湾に対抗して2・28事件70年の記念活動を行う。当時の共産党勢力も国民党政権と戦っており、台湾人の”戦友”だったとアピールしたいようだ。

 しかし、共産党の習近平総書記(国家主席)に権力が集中、言論統制などで政治的な締め付けを強め、対外的にも海洋進出で覇権的な姿勢を見せる中国と、一緒になりたいと考える台湾住民は決して多くない。

 台湾の人々は、強大化する中国にのみ込まれることを恐れている。その結果、民主選挙で蔡総統が誕生した。中国は台湾の民意として、蔡総統の存在を十分に尊重しなければならない。

2017年2月27日 無断転載禁止