川と発電と環境と

 森は海の恋人という言葉が生まれたのは宮城県の気仙沼湾だ。カキなどが赤潮の発生で激減したのが契機だった。原因の一つに湾に注ぐ川の荒廃があると考え、漁業者が上流の森に広葉樹を植えた。植物プランクトンが増え、湾の環境が改善したという▼このほど水利権更新問題が事実上決着した神戸川では、上下流の関係がダムで分断されている。河川流域を潤す水の3割が、来島ダム(島根県飯南町下来島)から江の川に流されて、美郷町で発電している。ダムより上流の山々から流れ出る豊かな水が、別の河川に注がれている▼発電所が完成したのは1956年で、当時はまだ家庭のエネルギーが薪炭だった時代。国家レベルで進められた事業だった。公害という概念さえもなく、河川環境を守る意識も薄かった▼発電事業用の水利権はいったん認められると強い効力を持つ。国交省によると、たとえ流域の住民が後で反対してもほぼ自動的に継続されるほどだという▼水力発電は再生可能エネルギーと言われるが、上流の水が別の川に注がれる神戸川の現状は、生態系の観点から見て再生可能と言えるだろうか。97年の河川法改正で河川管理の目的に環境保全が盛り込まれ、今では次世代にいかに良い環境を残していくかが問われる▼神戸川の分水は今後10年をかけて必要性を再検討することになった。復興に電源開発が必要だった戦後と今では住民意識も大きく変化している。時代に合わせて神戸川の未来をしっかり議論してほしいと願う。 (平)

2017年2月26日 無断転載禁止