地域に愛され30年 「荒布屋」最後の展示会

ギャラリーの思い出を振り返る石原幸雄さん=松江市北堀町、荒布屋
 江戸時代の商家の趣を残す「ぎゃらりー荒布(あらめ)屋」(松江市北堀町)が、3月1~5日に開く「庶民の浮世絵展」を最後に閉館する。石原建築設計事務所(同)の石原幸雄さん(66)が、30年ほど前に事務所を兼ねて開設して以来、自身の収集品や知人の作品を並べ、地域に愛されたが、築280年を数える建物の老朽化に伴い、取り壊しを決めた。石原さんは「当時の姿が残る、数少ない江戸時代建築の雰囲気を楽しんでほしい」と来場を呼び掛ける。

 木造2階建てのギャラリーは、江戸中期ごろから明治初期に営業した料亭で、歴史的建造物が並ぶ塩見縄手にある。石原さんの先祖は、松江松平藩7代藩主・松平治郷の時代の1790(寛政2)年、築約60年の商家を購入し料亭「荒布屋」を構えた。1階に玄関や帳場、調理場、2階には座敷を設け、主に松江藩の武士が利用したという。

 ギャラリーは石原さんが独立して事務所を立ち上げた1985年、誰もが気軽に立ち寄れる場にしようと、広さ約45平方メートルの1階部分の玄関と帳場を活用して開設した。昔の姿を残す帳場には当時の机や木製の金庫、座敷に上がる箱階段があり、行灯(あんどん)のすすで黒くなったマツの天井が歴史を感じさせる。

 石原さんの親戚が米寿を記念して安来織を並べた初回展示は、事務所開きと重なり、1日200人以上が訪れる盛況だった。以降は年2~6回のペースで、知人の芸術作品や、石原さんが収集した藍染めや浮世絵などを紹介してきた。

 2012年にパーキンソン病を発症し、体が思うように動かなくなっても「多くのつながりが生まれる場所にしたい」と近くの住民らの協力を得て無料開放し続けた。しかし、老朽化が進み、倒壊する恐れがあることから4月に取り壊し、閉館を決めた。さまざまな思い出が詰まった場所だけに苦渋の決断だった。

 最後となる展示会では、江戸時代の浮世絵師・歌川広重の東海道五十三次のびょうぶや歌舞伎役者の作品など、自身のコレクション約70点を並べる。石原さんは「ギャラリーは人生の宝。多くの人と一緒に思い出を振り返りたい」と笑顔を見せた。

2017年2月28日 無断転載禁止