こいつぁ春から…

 日米首脳会談の成果に「こいつぁ春から縁起がいいわえ」と思っていたら、思わぬところから火の手が上がった。大阪の国有地売却問題だ。「濡(ぬ)れ衣(ぎぬ)」と懸命に関与を否定する国会答弁が続く▼テレビに映る安倍首相の近況を見ていると、そんな印象を受ける。一般の感覚からすれば破格の安値だったことに加え、売却先の学校法人が建設中の小学校の名誉校長に、首相の身内が一時就任していたため憶測を呼んでいる▼冒頭のお馴染(なじ)みの台詞(せりふ)は河竹黙阿弥作の歌舞伎・通称「三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)」が元。通りすがりの夜鷹(よたか)を川に突き落として金を奪ったところ百両もあり、運が良かったと思う場面で語られる▼確かに日米首脳会談では、世界がその言動を注視するトランプ氏から厚遇され、ゴルフをしながら信頼関係を築いた。日米同盟の強化など日本側の要望はほぼ「満額回答」だった。運にも恵まれ、首相の狙いが当たったのだろう▼歌舞伎の中では「幸運」を手に入れたのは、台詞の前段にある「ほんに今夜は節分か」から節分の日。今年で言えば日米首脳会談の少し前になる。偶然だろうが、米国の利益にこだわるトランプ氏の姿勢も、節分に登場する欲深い「赤鬼」を連想させる▼トランプ氏がもたらすのは幸運なのか厄なのか-初の施政方針演説からは、まだ見通せない。ただ、黙阿弥は「三人吉三-」で因果応報の結末を用意した。幸運と思い込むのは危ないし、「濡れ衣」はきちんと晴らしておかないと、胡散臭(うさんくさ)さが残りかねない。(己)

2017年3月2日 無断転載禁止