雲南・吉田小に田部家寄贈「丸いピアノ」 希少な現役

田部家が寄贈したザイラーピアノ社製の「丸いピアノ」=雲南市吉田町吉田、町生涯学習交流館
 たたら製鉄を営んだ田部家が1923(大正12)年、旧吉田村(現島根県雲南市吉田町)の吉田小学校に寄贈したピアノが、同時期ごろにドイツの名門企業で製作され、品質に優れた貴重なピアノであることが明らかになった。半円形が特徴で、今も弾けるのは珍しいという。コンサートなどで音色を聴くことができ、「丸いピアノ」の名で地域で愛され続けている。

 次代を担う子どもたちを育むため、ドイツから松江に渡った3台のうちの1台を第21代田部長右衛門長秋が買い、寄贈した。小型のグランドピアノで幅、奥行きは各1・5メートル、高さは1・2メートル。現在は雲南市吉田町吉田の町生涯学習交流館で保管している。

 元島根県立大学短期大学部教授で同学部非常勤講師の白川浩さん(60)が2016年11月に同町を訪ねた際、国内外で初めて見た丸い形と、繊細で美しい音色に驚かされた。

 調べたところ、世界各国の品質コンクールで数々の賞を受賞したドイツの老舗メーカー・ザイラーピアノ社製と判明。鍵盤の近くに創業者エドワード・ザイラーを表す「ED・SEILER」と記されていた。

 3台のうち1台は所在不明で、もう1台は米子市の皆生温泉の旅館「東光園」のロビーに飾られているがほとんど使われていない。吉田のピアノは吉田小が火災に遭った際も被害を免れた。日本ピアノ調律師協会相談役の江森浩さん(69)=群馬県明和町上江黒=は「当時の半円形のピアノは残っているのが非常に珍しく、現役で弾けるものは国内でも数台しかない」と価値を評価する。

 地元の吉田地区振興協議会は大切に維持管理してきた。生演奏を住民に楽しんでもらうため、コンサートを毎年実施。10回目となる今年は3月5日午後1時半から、白川さんらを招いて雲南市吉田町吉田の町生涯学習交流館で開く。白川さんは「ピアノに合う曲を披露したい」と話している。

2017年3月3日 無断転載禁止