中国全人代開幕/経済の構造改革が必要だ

 中国の第12期全国人民代表大会(全人代=国会)第5回会議が開幕し、李克強首相は政府活動報告で、今年の国内総生産(GDP)成長率の目標を昨年実績より低い6・5%前後とし、経済の構造改革や汚職取り締まり、環境対策などに努める方針を明らかにした。

 成長目標の引き下げは3年連続。中国は中・低度の成長を「新常態」(新しい普通の状態)と呼んで国民に理解を促し、高成長時代から安定成長への軟着陸を目指すが、政府は成長率の急落を恐れて、減税や金融緩和で景気にてこ入れし、インフレの恐れも指摘される。中国は成長至上主義から完全に脱皮し、経済の質の向上に向けた構造改革に本気で取り組むべきだ。

 李首相は報告で「保護主義の傾向が強まり、主要国・経済圏の政策に大きな不確実性が存在する」と述べ、暗にトランプ米大統領の経済政策や英国の欧州連合(EU)離脱決定を「不安定・不確定要素」と指摘した。

 その上で、難局を乗り切るため、今年取り組むべき重点課題として(1)過剰生産の解消や国有企業債務の削減(2)行政の簡素化と市場優先(3)国民消費で内需拡大(4)技術革新(5)環境対策-などを列挙した。

 いずれも合理的な目標だが、成否は地方の当局や企業がどこまで真剣に取り組むかにかかっており、中央政府の統治力が問われている。

 李首相は報告の中で、スモッグの発生など環境汚染が深刻で、住宅や教育、医療、食品、所得分配、役人の腐敗などを巡って国民の不満が根強いことにあえて言及。こうした問題への取り組みが喫緊の課題である点を強調した。

 昨年のGDP成長率は前年比6・7%と、天安門事件で欧米の制裁を受けた1990年以来26年ぶりの低水準となったが、成長率の低下は新常態として織り込み済みであり、警戒する必要はない。

 むしろ問題なのは、経済の失速を避けようと公共事業の拡大や減税、住宅購入の規制緩和といった景気対策を打ち出し、不動産バブルの再燃を招いたことだ。成長重視と改革推進の「どっち付かず」であり今後に禍根を残す。

 今年1月には遼寧省長が過去に財政収入を水増ししていたことを認め、中国の統計の信頼性にも疑念が強まった。改革推進の中で、政策決定の基礎となる統計の精度を高めることが不可欠だ。

 国防費の伸び率は前年実績比7%前後で、初めて1兆元(約16兆5千億円)を超える見通し。近年、経済減速に伴って伸び率は小さくなったが、なお経済成長率目標を上回った。李首相は「軍を強化し、国の主権、安全、発展の権利を断固守らなければならない」と述べた。

 中国の国防費には研究開発費や装備の輸入費用などが計上されておらず、実際は公表値の2~3倍(台湾当局)との推計もある。中国は国際社会に対し、国防費の透明化に努めるべきだ。

 李首相は「世界平和の建設者であり続ける」「近隣諸国との友好、相互信頼、共同発展に資する周辺環境づくりに注力する」と平和主義を強調した。国際社会は南シナ海問題などで中国の覇権主義に懸念を強める。中国は言葉だけでなく、実際の行動で、平和主義を体現してほしい。

2017年3月6日 無断転載禁止