小さな街の古本屋

 岡山県高梁市図書館が、市出身の研究者の蔵書1万6千冊をいったん寄贈を受けた上で10年間放置し、大半を廃棄しようとした。登録して別の施設に保管したが、取りに行く職員が足りなかった。批判を受けているが、どこでも起こりうる▼財政難で公立図書館は予算が削られ、職員も図書費も減っている。保管には蔵書スペースも必要で、大量の本を分類して貸し出すという図書館の基本的機能が縮小しているようだ▼出版不況、本屋の減少、図書館の機能低下など、本をめぐる環境が悪化する中、松江市西茶町の古本屋・冬營舎(とうえいしゃ)が開店から2周年を迎えた。食べ物や料理の本が中心の小さな店が、本の不況の時代になぜやっていけるのか▼店主に聞いてみると、想像通り「本はさっぱり売れない」という。それでも続けてこられたのは常連や近所の人たちの差し入れだ。近所に住む女性が料理を届け、常連さんが近くのお店のコロッケやお菓子を手に来店する。本を買わない客も店で出している飲み物を注文する▼差し入れが多いのは、店主の人柄もあるだろうが、小さな古本屋の一軒が続けていけないようでは、文化を誇る松江の名が廃ると、そんな市民の気持ちが店を支えているように思えてうれしくなった▼ネットの普及で本を読む時間や買うお金が減る今、図書館が縮小し、本屋が減るのは時代の流れかもしれないが、それを黙って見ているのもしゃくだ。本を手に入れ、本を語り合う場所を市民の一人として大切にしていきたいと思う。(平)

2017年3月8日 無断転載禁止