地元企業の事業承継/多様な選択肢を視野に

 島根県内で事業所の減少に歯止めがかからない。経営者の高齢化が進む一方で後継者が見つからないため、廃業する事業所が増えているためだ。地域経済を支えている事業所の縮小は雇用減などを通じて地域の衰退を招く。廃業を食い止めるため、事業承継に向けた対策を進めていかなければならない。

 県内の事業所数は1999年に3万2千あったのが2014年には2万3500と3割近く減っている。零細な小売業や飲食サービス、建設業などを中心に廃業が増え、中山間地では生活に密着したガソリンスタンドなども姿を消している。16年には204事業所が休廃業し、廃業率は2・1%と都道府県別で全国4位(帝国データバンク調べ)。

 公共事業の減少や大型ショッピングセンターの進出、インターネットを利用した通信販売の普及など事業を取り巻く環境が大きく変わっている背景がある。

 親族で経営している事業所の場合、子女がサラリーマンなど他の仕事に就いていることが多く、よほど将来性のある家業でなければ継いでくれることは難しい。

 親族間の承継ができなければ従業員の中から後継者を選ぶか、M&A(企業の合併・買収)などを通じて他の企業に経営権を移譲する方法などがある。親族間にこだわらず相手方の経営能力を見定めた上で幅広い選択肢を視野に入れるべきだろう。

 従業員の中から後継者を選ぶ場合、障壁となるのが会社の債務や個人保証の問題である。新しい経営者に会社の借入金などの個人保証を求めようとすると敬遠されがちだ。

 後継者不足を打開するため、中小企業庁が全国都道府県に事業引継ぎ支援センターを設置したのに続き、県も本年度から対策に乗り出している。県内の商工団体に金融の専門家など推進員を配置して事業承継の相談に応じる一方、後継者育成セミナーや事業承継計画策定などを支援している。

 松江商工会議所に設置された県事業引継ぎ支援センターでは15年に業務開始以来約80件の相談を受け、うち他の企業への事業売却により成約にこぎ着けたのが2件。店舗や工場など事業用資産と経営者の個人資産がはっきり区分されていないことや旧経営者から株式を買い取る資金の確保などに関する相談も含まれている。

 大田市内で自動車板金塗装業を営む経営者が亡くなり廃業も検討されたが、創業以来の従業員が工場設備を買い取る資金を金融機関から借りて経営を引き継いだ例もある。

 事業承継に伴う相続税は最近減免されているが、事業者の間で十分知られていない。支援事業と合わせ周知徹底を図る必要がある。

 県内でも事業拡大に向けて事業所買収を考えている企業も増えている。金融機関は事業承継に伴う融資に当たって、新しい経営者の個人保証をできるだけ求めず負担を軽減するよう配慮してほしい。担保や保証に依存せず事業評価に応じた融資に移行していく必要がある。

 M&Aを通じた事業承継を推進するため、企業情報の蓄積がある金融機関などが積極的に仲介し、事業存続を図っていくべきだ。

2017年3月9日 無断転載禁止