性犯罪厳罰化/泣き寝入りなくすために

 性犯罪の厳罰化を柱とする刑法改正案が今国会に提出される。強姦(ごうかん)罪や強制わいせつ罪は起訴するのに被害者の告訴が必要な「親告罪」とされてきたが、この規定をなくす。さらに強姦罪を「強制性交等罪」に変更。これまでのように女性だけではなく、男性も被害者に含めた上で性交に類似した行為まで対象として法定刑を引き上げる。

 成立すれば110年前、明治時代の刑法制定以来の大幅改正となる。性犯罪に関する規定を巡っては「人間の尊厳に関わる罪なのに強盗(懲役5年以上)より軽いのはおかしい」「被害者が声を上げにくい」と被害者や支援団体が見直しを求め、法相の諮問機関である法制審議会が昨年9月に改正要綱をまとめた。

 改正案には家庭内の性的虐待などに対応するため、親などが影響力に乗じ18歳未満の子どもにわいせつ行為や性交に及んだ場合、暴行や脅迫がなくても処罰できる規定も新たに設けられ、関係者は「一歩前進」ととらえている。しかし強姦罪成立の要件である暴行や脅迫は強制性交等罪などに残り、被害立証で負担になるとの指摘もある。

 どうすれば、泣き寝入りをなくせるか。法案審議では被害者らの訴えに耳を傾け、丁寧に議論を積み重ねてもらいたい。ただ法改正で全てが解決するわけではない。法廷などで証言を求められる被害者に対する心のケアや加害者の更生支援の充実も急ぎたい。

 性被害に遭った人は声を上げにくい。勇気を振り絞り被害を申告しても、まず警察で「抵抗したか」「同意しなかったか」と詳しく事情を聴かれた上に、法廷でも同じような質問をされて証言を求められる。忌まわしい事件を何度も思い起こすことになる。

 強姦罪の規定は「相手の抵抗を著しく困難にするほどの暴行や脅迫」を用いた場合に限り罰することができると解釈されている。そのため抵抗の有無などをたださざるを得ないとはいえ、被害者にとっては、大変な苦痛だろう。しかも立証は難しく、泣き寝入りする人が少なくない。

 政府が先に閣議決定した刑法改正案では、強制性交等罪の法定刑は強姦罪の「懲役3年以上」から「懲役5年以上」に引き上げられ、親告罪の規定が削除されることで捜査機関は告訴がなくても立件できる。また「男性は加害者、女性は被害者」という前提が変わり、相手の性別を問わず罪に問えるようになれば、埋もれがちだった男性の訴えを掘り起こせよう。

 加えて親ら「監護者」による子どもへの性的虐待を暴行や脅迫がなくても罰する「監護者わいせつ罪」と「監護者性交等罪」が新設され、一連の見直しで被害者が置かれている状況はある程度改善されるとみられる。

 ただ強姦罪の暴行・脅迫要件が声を上げようとする被害者の足かせとなる懸念は残る。被害者らは「恐怖で体が硬直し、抵抗が困難になることもある」と要件の撤廃か緩和を求める要望を法制審に出したが、改正要綱には反映されなかった。

 法務省も「どこまでいったときに違法行為として刑罰を科すかという区切りの問題がある」とするが、性被害で声を上げやすくするためには避けては通れない課題だ。検討の必要があるだろう。

2017年3月10日 無断転載禁止