応仁の乱のリアル

 応仁の乱は小学校の教科書にも登場する日本史の定番である。乱が始まった1467年を「人よ空(むな)し」と暗記された人も多いだろう。試験には出たかもしれないが、後になってみると印象は空気のように薄い。日本の歴史観を変えたとも言われる革命的な戦乱だったにもかかわらず、多くの国民にとって聞いたことはあるけど中身になると「さあ」と戸惑うのではないか▼呉座勇一著「応仁の乱」の売れ行きが20万部を超え、歴史書としては異例のベストセラーとなっている。著者の呉座氏は国際日本文化研究センター助教。目を通してみたが、内容は結構学術的。マルクスの歴史観にも触れるなど学会にも一石を投じそうだ▼重たい内容なのに若い人によく読まれているという。「地味に大乱」「スター不在」「ズルズル11年」など戦乱の特徴を表したキャッチフレーズも生まれている▼歴史的事件には主役級の人物が登場するが、応仁の乱では誰が中心人物なのかよく分からない。複雑な人間関係と勢力図が入り乱れ、ジグザグしたいきさつはとらえどころがない。戦乱に加わった本人たちも何のために戦っているのか途中で分からなくなる▼複雑なことを無理に分かりやすくしようとせず史実をありのまま積み重ねた読後感。難しくても何か面白そうだと感じれば若い人たちは挑戦してくる。そんなメッセージも伝わってくる▼今日の下の者が明日は上の者に取って代わる下克上のスリル感。案外ゲーム感覚で読んでいるのかもしれない。(前)

2017年3月10日 無断転載禁止