励ますより寄り添って

 「大きくなったら、ぼくは博士になりたい そしてドラえもんに出てくるようなタイムマシーンを作る ぼくはタイムマシーンにのってお父さんのしんでしまう前の日にいく そして『仕事に行ったらあかん』ていうんや」▼2003年に過労死で父を亡くした小学1年の男児が書いた作文「ぼくの夢」。小さな胸に残る悲しみとやり場のない自責の念が伝わる。フォーク歌手の木下徹さんが曲をつけ、全国各地の遺族の集いでギターの弾き語りを続けている。出雲市で先日あった自死遺族フォーラムでも演奏した▼フォーラムでは、島根県内の遺族3人が登壇した。25歳の息子を亡くした女性は、不器用で仕事が長続きしない息子を何度も叱咤(しった)激励したことを悔いた。「十分頑張っていたのに、頑張れとしか言わない親には相談できなかったのか」▼涙ながらに多くの人前で語ることは、つらかったと思う。それでも語る理由は「自分と同じ思いをしてほしくない」との強い願いにある▼活気がない人や落ち込んでいる人を前にすると、励ましたくなるのが人情だ。「後ろを向くな」「乗り越えろ」との前向きな言葉は、気持ちはありがたいが、かえって負担になることもある▼3月は厚生労働省が定めた「自殺対策強化月間」。悩んでいる人に気付き、まずはじっくり話を聴くことを呼びかける。助言や自分の考えをはさむのは控え、「大変だったね」と声をかけることから始めたい。励ましよりも、寄り添ってくれる人が必要な時がある。(衣)

2017年3月13日 無断転載禁止