地域間対立の記念碑

 鳥取県教育委員会が、県立博物館から分離新設する美術館の建設地を倉吉市営ラグビー場と決め、平井伸治知事も追認した。最終局面で、鳥取市誘致を目指す地元関係者が「議論が不十分」と”待った”をかけ、黙って見守る倉吉市側と好対照をなした▼県民アンケートでラグビー場が最多の支持を集めた時点で、勝負あったと思っていた。鳥取市では、住民投票結果に反して市庁舎新築移転が決まった例があり「不屈の精神」を発揮した▼県立美術館はかつて鳥取市への建設が計画され、市がアクセス道路の整備を進めたところ、その後就任した片山善博前知事が凍結した。鳥取市民の「はしごを外された」無念さは分かる。ただし、単純に「県都にあるのが当たり前」の論法はいかがか▼県中西部には、県立文化施設が鳥取市に集中する現状に「鳥取市偏重の県政」との不満がくすぶる。「県都の恩恵」に感謝が見えない態度は中西部の神経を逆なでするだけだ▼知事選で美術館建設を公約に掲げた平井知事は、誘致合戦と距離を置いてきた。民意を重んじる誠意と思うが、こういう時こそ政治判断があっていいはずだ。この後、県議会の意見がまとまらなければ、アンケート結果を盾にするのだろうか▼鳥取市民を気遣ってか、博物館に美術機能の一部を残す方針も示した。中途半端な印象だ。美術機能を全部集約してでも、全ての県民が喜ぶ美術館になるよう中身の充実を願う。さもないと「平井県政初の箱物」は、地域間対立の記念碑になる。(志)

2017年3月12日 無断転載禁止