残業規制/引き続き是正を目指せ

 働き方改革の柱である残業時間の上限規制について、連合と経団連は繁忙期の上限を「月100時間未満」とすることで事実上合意し、残業規制の法制化が実現することになった。長時間労働是正の第一歩となるが、内容は不十分で、政府と労使は引き続き見直しを図っていくべきだ。

 1カ月の上限時間について、連合は100時間「未満」を、経団連は「以下」を主張して対立していたが、安倍晋三首相が100時間未満とするよう要請し、連合の神津里季生会長と経団連の榊原定征会長は受け入れる意向を示した。政府は働き方改革の実行計画を3月中にまとめ、残業時間の上限を明記する労働基準法改正に着手する。

 残業規制案によると、厚生労働省が目安としている月45時間、年360時間を残業時間の原則的な上限とする。繁忙期に限り、1カ月100時間未満、2~6カ月なら月平均80時間まで認める。1年間の上限は720時間(月平均60時間)とし、5年後に内容を見直すことも盛り込んだ。

 日本で長時間労働の抑制が進まない大きな原因は、労基法が残業時間に緩いことだといわれてきた。労基法は残業時間の上限を定めておらず、繁忙期には労使が協定を結べば、特例として年6カ月まで残業時間をほぼ無制限に設定できる。

 このため残業時間の上限が労基法に明記され罰則規定が設けられるのは、確かに前進である。問題は繁忙期の上限が長すぎることだ。厚労省は労災認定の目安を1カ月100時間超、2~6カ月で月平均80時間超としており、繁忙期の上限はこの「過労死ライン」に沿う形で決着した。

 神津会長は「月100時間まで働かせることができるというのは誤ったメッセージだ」とくぎを刺したが、現実には過労死ラインぎりぎりの残業が容認されたと受け取られる恐れがある。過労死の遺族などからは強い反発が出ている。

 連合は政府が検討していた「月100時間」という案に強く反対していたが、これに「未満」を付けるだけで矛を収めた。ここまで妥協する必要があったのか疑問である。

 ただし、連合と経団連が、残業時間の特例を認める場合でも原則的な上限の月45時間に近づけることで合意していることは重要だ。まず労使がこの合意を守るよう努力しなければならない。その上で、5年後にこだわらず、繁忙期の上限時間を中心に、残業規制の内容を継続的に見直していくことを、政府と労使に求めたい。

 新しい残業規制が本当に長時間労働を是正する効果があるかも不安が残る。日本では労働者が働いた時間を実際より少なく記録するサービス残業が指摘され、こうした不法行為を根絶しなければ、規制の実効性は期待できない。労働基準監督官の増員など監督体制の強化も急務だ。

 残業規制の焦点の一つだった運転手や建設作業員ら適用除外業種の扱いは結論を持ち越したが、政府は猶予期間を経て規制対象とする方向で調整する。終業から始業まで一定期間の休息を義務付ける勤務間インターバル制度の導入を企業の努力義務とすることでも合意した。いずれも重要な課題であり、早期の実現に努めてほしい。

2017年3月15日 無断転載禁止