働き者の神様

 日本の神様は働き者だ。有名なところでは太陽を神格化した神様で、皇室の祖神(皇祖神)の天照大神も「日本書紀」の中に、機織りをしている姿で登場する▼他の日本の神様も一人一役、仕事を持っている。一方、キリスト教では、労働は苦役の一面を持つ。人間の始祖アダムとイブは、神との誓いを破って禁断の木の実を食べ、天国・エデンの園から追放され、地上で労働を強いられた▼日本の神道は、何もないところから命あるものを生み出す「産霊(むすひ)」の行為を最大の善行と考える。精魂を込めると物にも命が宿る。それが「ものづくり」の使命感となり日本社会を支えた。日本人に宿る産霊は、繁栄の基盤なのだ▼武満誠著「日本人なら知っておきたい神道」によると、日本人の労働観は「神人共働」の尊い行為。会社でも家庭的関係を築き、同僚と楽しく仕事に励めば社会の生命力が高まると考えた。会社に神棚がある理由も何となく分かる▼過労死防止の残業規制は、「月100時間未満」で一応の決着だ。ただ、途中の議論で労働は時間の切り売り、どちらかというと苦役に近いという考えに縛られていたように思えてならない。経済至上主義、欧米の価値基準に見える▼長時間労働で体を壊し、場合によっては命まで取られることは、この国の働く文化に到底馴染(なじ)まない。神々も楽しんで機を織るような、日本的「産霊思想」とは真反対にある。働き方改革に異論があるわけではないが、生き甲斐改革でなければ意味がないと思うだけだ。(裕)

2017年3月18日 無断転載禁止