Uターンラッシュを過去の話に

 東京駅や羽田空港では、盆正月になると大きな荷物を抱えて故郷に帰省する人が後を絶たない。世間でいう「Uターンラッシュ」だ▼この現象は地方が長年、都会地に人材を供給してきた証しだ。島根県は1954年以降、転出者が転入者を上回る「社会減」が一度も途切れたことがない。現在の県人口の半数に迫る計約31万人が流出した▼人口の格差が招いた弊害が昨夏の参院選で導入された合区だった。人口が少ない4県が対象にされた。自民党島根県連会長の竹下亘衆院議員は党会合で、「人口が少ないところから合区にするのは何の哲学もない」と早期解消を訴えた。同感だ▼東京で勤務して2年。故郷への熱い思いを持った多くの人に出会った。ある年配の経営者が「古里に帰省して東京の自宅に戻った時、何とも言えないさみしさに襲われるのは若い頃から変わらない」とつぶやいたのが印象深い▼「ふるさと創生」を唱えた竹下登元首相は終戦時、久しく見なかった故郷の荒廃を見て「国破れて山河あり」と感慨に浸り、政治の道を志したという。その源流を意識したのか、安倍晋三首相が2014年に「地方創生本部」の新設を表明したのは島根県内を視察した直後。ただ現時点で地方創生が国政課題の本流から支流にそれかけているのが気になる▼東京一極集中を是正し、持続する地域づくりが叫ばれて久しいが、求められるのは結果。Uターンラッシュが過去の話になった時、地方に明るい灯がともされていると信じている。(敬)

2017年3月19日 無断転載禁止