公示地価と地方/底値感はあるが二極化

 国土交通省が今年1月1日時点の公示地価を発表した。全国平均で商業地が2年連続で上昇したほか、住宅地も9年ぶりに下落を脱し横ばいに転じた。東京、大阪、名古屋の三大都市圏と札幌、仙台、広島、福岡という地方中枢都市が上昇をけん引した。

 山陰両県を含め地方圏全体の下落率は縮小したものの、調査地点の6割で下落が続き、地方間の二極化が進んだ。それを象徴するように米子市では、破綻・閉鎖した大型店の向かいの地点がマイナス10・1%と住宅地を含め全国で最大の下落幅になった。

 三大都市圏や中枢4市の上昇には、人口集中も大きく作用している。2016年の人口移動を見ると、東京など1都3県、愛知県、大阪府と地方中枢4市はいずれも、転出する人口よりも他の地域から入ってくる人が多い転入超過となっている。人口増加によって需要が生まれ地価がアップする構図になっている。

 地方圏は、中枢4市を除いた数値でもマイナス幅は縮小してきた。地方都市でも、駅前に高層マンションが建つことで周辺からの移住者を集めている。さらにベッドタウン化や子育て環境の充実、再開発などによって土地の価値を上げているためだ。

 全体的には底値感が広がり、取引が活発になってきたと考えられる。それを裏付けるように住宅地では、下落率が2%以上は前年の秋田、山梨、和歌山、鳥取、鹿児島の5県から秋田、鹿児島の2県に減少。商業地も2%以上下がったのは9県から4県に減った。

 ただ、都市への流出もあって地方部の人口減少は続き、地方圏全体はバブル経済の崩壊後、一貫して下落している。このままでは、地方圏の中でも便利な所が上昇し、それ以外は下がる二極化は今後も進むとみられる。

 政府は地方創生の目標として、16年に11万7868人だった1都3県の転入超過を20年には転入と転出を均衡させるとする。それを実現させることができれば、地方の人口減少も緩和され地価を下支えするだろう。

 全国的には商業地は、16年に2404万人の外国人旅行者が訪れたこともあり、店舗やホテルの需要が高まっている。上昇幅は、名古屋圏を除いて拡大している。

 上昇率のトップ10を見ても、大阪市、京都市の地点は観光が大きな要因だ。銀座も建て替えとインバウンドが影響している。「爆買い」は下火になったが、商業地の緩やかな上昇を維持するためには、訪日客に選ばれる街づくりを意識する必要がある。

 わずかながらプラスとなった住宅地は、低金利が続いていることや住宅ローン減税といった施策に加えて「緩やかな回復基調が続いている」とする景気動向に支えられている。

 ただ東京圏でも、東京五輪の招致を追い風に上昇が続いてきたが、高値になってきたことから、ミニバブルへの警戒感が強まっていると見るべきだろう。

 一方、鳴り物入りで始めた東京23区からの本社機能や、中央省庁の地方移転は進んでいない。今回の公示地価からも地方創生策の効果があまり出ていないことが分かった。さらなる施策の展開を望みたい。

2017年3月23日 無断転載禁止