宅配便問題/消費者も考え直すときだ

 宅配便最大手のヤマト運輸は、インターネット通販の普及に伴う荷物増と人手不足によるドライバーの長時間労働を改善するため、配達の時間帯指定方法など業務の大幅な見直しを始めた。荷受量の抑制につながる値上げも検討している。

 ネット通販で「早く安く」品物が届くのは宅配便に負うところが大きく、ドライバーの重い負担は、便利さから気軽にサービスを利用する消費者とも無関係ではない。

 少子高齢化で働く世代の人口が減り「働き方改革」が求められる中、ドライバーへのしわ寄せでビジネスが成り立っているのだとしたら見過ごせない。ここは事業者だけでなく、利用する消費者も一緒に「顧客至上主義」を考え直すときだろう。

 宅配便ドライバーの長時間労働がなくならない要因の一つは、荷物量の大幅な増加だ。国土交通省のまとめによると、2015年度の宅配便個数は37億4500万個と前年度から3・6%増加。この10年間で3割も増えた。スマートフォンなどを使いネット通販で手軽に買い物ができるようになった影響が大きい。

 通販大手では一定額以上の購入や有料会員などへの送料を「無料」にして顧客獲得を競っており、その点も荷物増に拍車を掛けている。

 しかし配送に費用と人手がかかっていないわけはなく、流通段階のいずれかで吸収されているにすぎない。消費者も宅配便を取り巻くそのような構造を知っておきたい。

 荷物増の一方で、ドライバーの人手確保は追い付いていない。求職者1人当たり、企業などからどれだけ求人があるかを表す有効求人倍率をみると、足元では全職種(常用雇用)が1・36倍なのに対して、トラックドライバーを含む運転手は2・68倍と不足ぶりが突出している。

 慢性的な長時間労働や仕事の不規則さ、低めの賃金などが敬遠されており、業界全体で20年度には10万人を超えるドライバーが足りなくなるとの予測もある。

 このような事情を受けてヤマト運輸は、ドライバーの負担軽減へ対応を急いでいる。具体的に配達の時間帯指定では、比較的利用の少ない「正午~午後2時」を近く廃止。ドライバーの終業に影響しやすい「午後8~9時」は「午後7~9時」に改め、余裕を持たせる。一方、荷受量の抑制へ秋までに料金を値上げする方向だ。

 ヤマト運輸は宅配便市場の5割近くを占める最大手のため、同社が仕事のやり方を見直せば影響は大きい。業界全体の労働環境や処遇の改善につながることを期待したい。そのための値上げであれば、通販業者や消費者もやむを得ないと思うだろう。

 宅配便をはじめ物流業界の危機的状況は今に始まった話でなく、業界と国交省などがさまざまな取り組みを進めている。

 単身者などは自宅にいないときが多いため近所のコンビニエンスストアで荷物を受け取れるようにしたり、駅に宅配ロッカーを設置して仕事帰りに取り出せるようにしたりしている。こうしたサービスが広がれば、ドライバーの二度手間となりコストもかかる再配達を減らせる。仕事の見直しと並んで、関係者のさらなる工夫を応援したい。

2017年3月25日 無断転載禁止