フルカウントの攻防

 スリーボール、ツーストライク。野球のフルカウントは攻守双方が崖っぷちに立つ。次の1球で四球か三振か、凡打か好打か、結果が大概出る。白と出るか黒と出るか。スリリングな局面に見る者の心も高鳴る▼NHKのBS番組「球辞苑」によると、プロ野球で昨季、フルカウントは1試合平均9・9回あった。出塁率は4割6分7厘。投手は四球が嫌だから、好球を待てる打者がやや有利か▼ただ、打ち気が強過ぎるとスイングは乱れ、鈍る。そこに投手は付け入り、誘い球で罠(わな)をはる。谷繁元信さん=江の川(現石見智翠館)高出身=は番組で、後続に強打者が控えるかどうかも駆け引きに影響すると解説した▼森友学園への国有地売却問題を巡る籠池泰典理事長と安倍晋三首相の攻防も、フルカウントに似て、どちらが有利か分かりにくい。籠池氏は証人喚問で強気に「大振り」の発言を重ねたが、小学校建設工事の請負契約書に関する疑惑を追及されると腰を引き「見逃し」を決め込んだ▼首相は自分と夫人は問題に関与していないと否定。直球勝負に見えて、夫人の証人喚問を拒む姿は、甘い球をバットに当てられエラーが出るのを恐れているようにも映る。籠池氏の後続に強打者がいるわけではあるまいに。「ここで幕引き」という思惑を勘繰りたくなる▼白黒をはっきりさせたい国民はたまらない。イライラは世論調査の数字に表れた。破格値で国有地が売られた森友学園問題。これでゲームセットなら「金返せ」と両方に野次(やじ)が飛ぶ。(杉)

2017年3月29日 無断転載禁止