働き方改革/実効性を高める具体策を

 政府の働き方改革実現会議は、残業時間の上限規制、同一労働同一賃金などを柱とする働き方改革の実行計画を決定した。長年の課題である長時間労働の是正や非正規雇用の処遇改善に向けた取り組みが始まる。実効性を高める具体策と制度の継続的な見直しを進めてほしい。

 実行計画には、テレワークなど柔軟な働き方の環境整備、子育て・介護と仕事の両立、障害者の就労支援、高齢者の就業促進などの目標も掲げた。労働政策審議会で労働基準法など関係法の改正案をまとめ、政府が年内に国会に提出する方針だ。

 最大の柱である残業時間規制では、上限を初めて労基法に明記し罰則規定を設ける。「月45時間、年360時間」を残業時間の原則的な上限とした上で、繁忙期に限り特例として「1カ月100時間未満、2~6カ月なら月平均80時間以内」とし、「1年間の上限は720時間」とする。

 現行の労基法は残業時間の規制が緩やかで、繁忙期に労使が協定を結べば、事実上「青天井」で残業時間が設定できる。それに比べれば長時間労働是正の第一歩といえるが、内容は不十分である。

 問題点の一つは、繁忙期の上限時間が長すぎることだ。この時間数は厚生労働省の労災認定の目安である「過労死ライン」を基に定められており、そのライン近くまで働かせることができると受け止められる恐れがある。

 運転手と建設作業員、医師については、激変緩和措置として適用を5年間猶予した。残業時間の上限規制は5年後に見直すとしているが、繁忙期の上限時間の短縮と規制の強化は、今後の議論の柱となる。

 そもそも働いた時間を少なく記録する「サービス残業」がはびこっている現状では、上限規制を法制化しただけで労働時間短縮の効果が上がるとは思えない。財政状況が厳しいとはいえ、労働基準監督官の増員など監督体制の強化も不可欠である。

 同一労働同一賃金は、正社員に比べて大きな差のあるパートや派遣労働者など非正規労働者の賃金を引き上げて格差を是正するのが狙いだ。賃金の最も大きな部分を占める基本給については、能力や成果などが同じなら同一としなければならないとの原則を明記した上で、違いがある場合はそれに応じた賃金格差を認めるとした。

 非正規と正社員の待遇に格差がある場合は、経営側にその理由を説明する義務を課する。格差の基準とされる能力や成果の違いを判断するのは経営側だが、明確なガイドラインは作りにくい。経営側には説明義務を果たす努力が求められ、恣意(しい)的な対応を防ぐための方策も必要になるだろう。

 実行計画には、高収入の専門職に残業代を支払わない「高度プロフェッショナル制度」の創設も盛り込まれたが、「残業代ゼロ法案」という強い反発を呼び、法改正案は国会で一度も審議されていない。政府はあらためてこの制度について丁寧に説明する義務がある。

 働き方改革の目標は賛成できるものが多い。目標を実現するための手だてを整えるとともに、労使の取り組みを支援するきめ細かい具体策が示されなければならない。

2017年3月29日 無断転載禁止