レッツ連歌スペシャル(要木木純)・3月30日付

挿絵・Azu
 今回の前句、

 友がみな我よりえらく見える日々

は、石川啄木の短歌、

 友がみな我よりえらく見ゆる日よ

 花を買ひ来て

 妻としたしむ

から。「見ゆる」を「見える」と口語にしました。また、「日よ」を「日々」にして、ある特定の日だけではなく、いつもいつも、自分のダメ加減を自覚しておりながら、生活態度を決して変えようとしない、自堕落な人間の雰囲気を出してみました。要するに、啄木の作とうってかわって、俗な感じにしてみたかったのですが、独りよがりであったかもしれません。そんな選者の思惑とは関係なく、今回も意表を突く面白い付句が多く寄せられました。

偽ブランドをまたも買わされ  (浜田)勝田  艶

今に見てろが口ぐせになり   (安来)根来 正幸

家の裏手にできたマンション  (松江)山崎まるむ

ゆとり世代も格差気にする   (松江)相見 哲雄

たかが逆上がりされど逆上がり (松江)中村 清子

負けじとスマホ買いに行く母  (松江)土江 ユミ

鏡よ鏡一番はだれ       (出雲)平井 悦子

ベビーブーマー続く戦い    (雲南)錦織 博子

さがしてもない受験番号    (松江)持田 高行

バカは死ななきゃなどと言いつつ(浜田)滝本 洋子

頭のハゲに風格がある     (江津)江藤  清

 他人との競争にこだわる悲しさ、哀れさ。人に馬鹿にされてると思い込んで、気になってしょうがない。そんな人間のペーソスがうまく表現されています。

返信葉書欠にマルつけ   (出雲)はなやのおきな

一升瓶に今日も飲まれて    (松江)田中 堂太

 これじゃあ、ひねくれて、体をこわしてしまう。

 この劣等感、挫折感はどうしたら解消できるか。

 逃避したり、力んだり。

巌窟王をひたすらに読む    (美郷)芦矢 敦子

お菓子のような甘い本読む   (美郷)源  瞳子

サングラスかけ耳栓をする   (江津)大岩 郁夫

襟元きちっと笑顔白足袋    (浜田)玉田 秀子

 玉田さんの句は、友のえらさを詠んだのではなくて、劣等感に負けず、シャキッと身だしなみを整えて生きていこうという、という自分自身の気の張りを、表現しているのでしょうか。なかなかいい付け方ですね。

 諦観、悟り、詠嘆で嫉妬心を克服しようとする。

終わってみればみんな一緒だ  (松江)加茂 京子

昔を今になすよしもがな    (松江)庄司  豊

ライバルだったこともあったな (出雲)吾郷 寿海

 やはり、啄木のように、家族にいやしてもらうのがいいですね。八つ当たりはいけませんよ。実際の啄木は、決してよき夫ではなく、問題の多い人でしたが。

妻の手料理一輪の花      (益田)石田 三章

啄木きどるも妻団子好き  (益田)おおいこうすけ

奥さん前にたたく大口     (江津)花田 美昭

仲良し夫婦ごっこしてます(兵庫・明石)折田 小枝

婦唱夫随で一家安泰      (出雲)津戸 弘光

母は黙って聞いてくれてた   (松江)花井 寛子

母の紅茶でほっと一息     (出雲)野村たまえ

さらに上ゆくうちのじいさん (鳥取)上山いっぺい

一笑に付す百歳の祖父     (益田)可部 章二

 私としては、ぜひ連歌の世界に遊んで、日々の競争や挫折感を忘れてほしい。でも、

酒でまぎらすボツのくやしさ  (益田)石川アキオ

となると、ストレス倍増で逆効果。

 選句は、選者の個性、能力や、選ぶ時の気分にどうしても左右されます。そこがいかがわしいといえばいかがわしいですが、座(場)の文学としての連歌の面白いところでもあります。もちろん、できるだけ客観的に、公平にと努力はしていますが。どうか、当落は気にせずに、連歌を楽しんでいただければと思います。

            (島根大学法文学部教授)

2017年3月30日 無断転載禁止

こども新聞