映画プロデューサーのささやかな日常(47)

映画『一週間フレンズ。』はまもなく公開終了です。劇場へはお早目に。先日、出演者とおこなったチラシ配りの様子
上半期最大の話題作

   エンディングの味は?


 この春の映画興行はアニメ映画がランキングの大半を占めていますが、その中で唯一気を吐いている実写洋画が、2月下旬に公開された『ラ・ラ・ランド』です。米アカデミー賞では主演女優賞、監督賞を獲得し、日本では興収30億円、観客動員150万人を突破しています。

 監督は前作『セッション』でも多くの賞を受賞した、弱冠32歳の若き俊英デイミアン・チャゼル。舞台は現代のロサンゼルス。ジャズピアニストであるセバスチャンと、カフェのアルバイトで生計を立てながら女優を目指すミアが恋に落ちます。ところが、それぞれの夢をかなえるため、この恋が岐路に立たされます。

 主人公のジャズピアニストを演じるライアン・ゴズリングは、カナダ生まれの俳優。本作でのゴールデングローブ主演男優賞(ミュージカル・コメディー部門)受賞のほか、アカデミー主演男優賞ノミネート経験も2度目の演技派です。女優志望のミアを演じるのはエマ・ストーン。『アメイジング・スパイダーマン』シリーズのヒロイン役や、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』ではアカデミー助演女優賞や英国アカデミー助演女優賞など数々の賞にノミネートされています。

 そして、気になるタイトル“La La Land”の意味ですが、次の三つがあるそうです。1「カリフォルニア州ロサンゼルス」、2「現実離れした世界、おとぎの国」、3「現実から遊離した精神状態」。

 僕は公開早々に見ましたが、一度聞くと忘れられないメロディーと圧巻のダンスシーン、ロマンチックなロケーションや舞台セット、衣装-なのですが、正直、ストーリーは「ありきたり」だとも思いました。確かに、検索してみると「過去の名作からの引用だらけ。オマージュ表現も失敗している」という辛口な批評もあります。

 しかし、いま世界的に現実社会が混迷しており不安定だからこそ、個人の強いファンタジックな物語が必要であり、人生に起きる「選択の奇跡」を盛り込んだ物語が大人だけでなく、あらゆる世代に響くのだと思いました。

 デイミアン監督自身も、若き日に授業で出合ったジャズに夢中になりジャズドラマーを目指したそうですが、その夢はかなわなかったそうです。若い監督ですが、挫折があればこそ、それを自分なりに消化してかみ砕き、改めて「夢」のある壮大なエンターテイメントを構築することができたのでしょう。

 ところが、意外なのは物語のエンディングです。一気に年月が流れ、挫折、結婚、成功が描かれます。単なるハッピーエンドではなく、2人が何かを諦め、何かを得るという結末。この終わり方はグッと心に染み入りました。ある意味、極上の「ビターエンド」と言ってもいいのではないでしょうか。人生は楽しく、そして苦い。それを実直にみずみずしく表現した『ラ・ラ・ランド』。間違いなく今年見るべき一本です。

 (松竹映像本部・映画プロデューサー、米子市出身)

2017年3月31日 無断転載禁止