水鳥が選んでくれる豊かな地域に

 松江城の近くに住み歩いて通勤していたころ、早めに家を出ていた。通勤路の城山内にはハトが多く、引き返すことがあったからだ。鳥が嫌いな母が怖がる姿を見て育ったためか、鳥が苦手だ。鳥がいる観光地は避けることが多い▼ただ、冬の使者として斐伊川河口や宍道湖に飛来するコハクチョウやガンなどの大型水鳥は少しひかれる。迷い込んだかのように田んぼにやって来たコウノトリを見つけると、幸せを運んで来てくれたと浮き立つ▼河口が広い斐伊川の下流に宍道湖と中海の二つの湖があり、周囲に水田地帯が広がるこの地域は、ツルやガンなど五つの大型水鳥が生息できる国内唯一の場所とされる。豊かな餌場と安心できるねぐらがある証しで今季も約4千羽のコハクチョウとガンが来た▼琵琶湖以西でガンとコハクチョウが集団で飛来できるのは宍道湖・中海周辺しかなく、広々とした田んぼで落ち穂を探すコハクチョウの姿が日常で見られるのはぜいたくなことだと思う▼今季は出雲平野でナベヅル15羽が越冬する姿もあった。数羽での越冬は何度かあったが、これほどの数は初めて。中国大陸で繁殖活動するナベヅルは家族単位で南下し、大半が鹿児島県で冬を越す。たまたま出雲に立ち寄り、気に入ってくれたのだろう▼越冬地として良いと認識してくれれば、来季も同じグループが幼鳥を連れて再訪するかもしれない。宝のような地域に暮らしている有り難さ。水鳥と共存できる環境を守っていくためにできることを考えたい。(衣)

2017年4月1日 無断転載禁止