家庭内野党の心労

 上方落語の四天王の一人といわれた三代目桂春団治の持ちネタには「ひつれいさんですが」というフレーズがよく使われる。「失礼ですが」の大阪弁で「し」が「ひ」に変わり、質問が「ひつもん」になったりする▼聞きにくいことを尋ねようとしたり、話題を変えたりするときなどに用いられる。その場の空気を忖度(そんたく)した前置き語句でもあり、品のある芸風にけんか腰に聞こえる河内弁も交えて春団治の味を深めた▼大阪市の学校法人、森友学園問題を巡る安倍昭恵首相夫人と籠池泰典氏の妻のメールのやりとり。「ひつこいとは安倍総理には失望しました。主人は悪者ですね」と籠池氏の妻▼安倍晋三首相が籠池氏の一連の発言に「しつこい」と国会答弁で不快感を示したことに対する籠池夫人の反応。「ひどい、ひどすぎます。幼稚園は破産、お父さんは詐欺罪、あんまりにも権力を使うなら死にます」など、やりとりを重ねるうち籠池夫人の文面は怒りに変わっていく▼言語心理学によると、普段は標準語で話していても、時として高ぶる感情が方言を呼び起こすそうだ。しつこいと書くべきところを、メール文の会話調にも誘われて方言が出てしまったのだろうか▼昭恵夫人を国会に証人喚問すべきかどうか。野党の喚問要求に「問題の本質とは何の関係もない」と気色ばむ安倍首相。昭恵夫人の肉声は伝わってこないが、心労は相当なものだろう。失礼ながら、「家庭内野党」として割り切れば気持ちも楽になるのではないか。(前)

2017年4月2日 無断転載禁止