3勝2敗が一番強い

 大相撲では3勝2敗が一番強い。横綱の生涯星勘定は、2勝1敗より3勝2敗が多いそうだ。大勝ちしてもけがが多ければ土俵人生は短い。コツコツ星を積み上げるのが、「無事これ名馬」ならぬ名力士▼3勝2敗で最強なら、4勝3敗や5勝4敗も立派なものだ。思い出すのは、新聞記者の大先輩。生涯「11勝10敗」を自分に言い聞かせてきたという。多くの勝負をしてきたし、その分負けも多かった。負け方が大切と言っていた▼仕事で失敗、鼻っ柱も折れ、敗北感に学ばされる度に思い出す。先輩はまた「誰かに何かしてあげて、手柄を取られたと思っても、あげたのだから怒らない」とも。負けて得する仕事の秘訣(ひけつ)。理解できたのは何年も後だった▼4月最初の月曜日。新社会人の入社式が重なる日だ。景気は持ち直し求人も増えて、かつての「就職氷河期」を生き延びた新人の悲壮感はやや薄れたようにみえるが、仕事に就いた後数年内の若者の離職率は、依然高止まりする▼引き受ける企業側には、やっと集めた人材にうまく育ってほしいという思いもあるだろう。若者が抱く仕事への期待と、現場のギャップはいつの時代も大きい。そう簡単に「一人前」になれるほど、世間は浅くも甘くもない▼進学から就職と、勝ち負けでいうなら「勝ち残って」今がある、と思った人もいるだろう。でもこれからは、上手な負け方も覚えてみては。星勘定一つ分、勝ち越す余裕が持てたなら、周りの景色も変わるだろう。(裕)

2017年4月3日 無断転載禁止