英国のEU離脱/共存共栄の関係を築け

 英国が欧州連合(EU)に離脱を正式に通知し、原則2年の交渉期間が始まった。欧州単一市場からの英国の退場は世界経済に大きな影響を及ぼす。英国とEUには、経済の混乱を回避し、共存共栄できる関係を築くよう努めてもらいたい。

 英国とEUの交渉は5月か6月に始まり、交渉期間が延長されなければ、英国は2019年3月末にEUから離脱する見込みだ。加盟国が離脱するのは、欧州統合の歴史で初めてになる。

 英国とEUは交渉入りの前から鋭く対立している。問題となっているのは、離脱の条件を協議する交渉と、自由貿易協定(FTA)の締結など離脱後の関係を話し合う交渉の進め方だ。

 英国は二つの交渉を並行して行うことを主張しており、2年の交渉期間にEUとのFTAも締結したい考え。これに対しEU側は、離脱交渉の合意前にFTA交渉に入ることを拒否する構えで、英国の希望は認められそうにない。

 離脱交渉を先行させるとすれば、英国にとって一連の交渉は困難なものになると予想される。英国の離脱には、最終的にEU27カ国の議会承認が必要で、離脱交渉の期間は実質的に1年半ほどと考えられる。

 英国は移民の流入制限の権限を取り戻すことを優先しているが、そのほか、未払い分担金など約600億ユーロ(約7兆2千億円)の取り扱いなど多くの問題を短期間に協議しなければならない。たとえ離脱交渉で合意に達しても、残りの期間でFTA交渉をまとめるのはほぼ不可能だろう。日本など第三国とのFTA交渉も、EU離脱後まで待たなければならない。

 FTAの締結に至らないまま英国がEUを離脱すれば、英国とEUの間に貿易協定がない空白期間が生じてしまう。その場合、世界貿易機関(WTO)のルールに従って関税が課されるが、急激な環境変化は大きな経済的混乱を招く恐れがある。混乱を避けるために、交渉期間の延長や、メイ首相が主張する「激変緩和」の移行期間の設定を検討すべきではないか。

 EU側は厳しい姿勢で英国との交渉に臨むとみられる。離脱ドミノが起きるのを防ぐためだ。4~5月にはフランス大統領選、9月にはドイツ連邦議会(下院)選が控えており、EU離脱を掲げる政治勢力が拡大する可能性がある。離脱の先駆けとなる英国に寛大さを示すわけにはいかないだろう。

 しかし、英国に厳し過ぎる要求をすれば、EUのためにもならない。例えばEUが英国からの輸入に高い関税率を課した場合、英国からの輸入価格が上昇して輸入が減少し、英国、EUともに経済的な打撃を受ける。その影響は世界経済全体に波及する。

 英国とEUの交渉においては、双方が利益を得る建設的な関係を構築することを目指すべきだ。どちらも歩み寄る必要があるが、特にEUには、大局的な見地に立ち、柔軟な姿勢で交渉を進めるよう望みたい。

 トランプ米大統領の登場で、世界全体に自国第一主義や保護貿易主義が広がりつつある。英国とEUの交渉が実りある合意に達し、こうした流れに歯止めをかける力になることを期待したい。

2017年4月5日 無断転載禁止