世事抄録 苦難は成長の糧

 最近のテレビはグルメ番組が多くなりました。リポーターも「おいしいですね」ばかりでは能がないので「甘~い!」という表現をよく使いますね。これは甘ったるい甘さではなく、食品の素材自体が持っている甘さのことで、最高のほめ言葉です。

 生鮮食品は凍る寸前の過酷な環境に置かれた時「凍るまい」として体内に糖分を増やすのだそうです。糖分が多くなるほど氷結点が低くなることは以前、氷温食品のお手伝いをした時に聞いたことがあります。これが素材本来の甘さです。

 全国でも評判の高い、甘い完熟トマトを栽培している人の手記を読むと、やはりよく似た記述があります。トマトが結実してからは水分の補給をできるだけ制限して過酷な環境に追い込むのです。すると甘い実になる。生物の持つ「生き延びよう」とする力をできるだけ引き出してやるのだそうです。

 氷温食品協会の故山根昭美博士は講演でこれらの例えをよく語っておられたのを思い出します。人も同じように過酷な環境に陥った時、必死になって乗り越えようとすればさらに豊かな人間に成長できるということを。

 旅立ちの春です。人生の苦難は成長の糧といわれます。「若い時の苦労は買ってでもしなさい」という言葉は、若い頃には聞き流していました。古希の今聞けば至極納得です。

(米子市・さんでぇ毎日)

2017年4月6日 無断転載禁止