米のシリア攻撃/次は和平協議の道筋を

 シリアの反体制派支配地区で起きた化学兵器を使った攻撃への対抗措置として、トランプ米大統領がシリア軍基地への巡航ミサイル攻撃に踏み切った。トランプ氏は化学兵器の使用確認から短時間で攻撃を遂行したことで、介入に消極的だったオバマ前大統領とは異なり、「野蛮な攻撃は許さない」という決意を世界に示したことになる。

 しかし、このミサイル攻撃は化学兵器使用など非人道的な軍事行動を抑制する効果はあるものの、シリア情勢の安定化にどうつなげるのかという展望が開けてこない。単発的な懲罰攻撃に終わらせずに、21世紀最大の悲劇とされるシリア情勢の解決に向けて、米国が政治交渉でも積極的に動きだす時である。

 2011年にシリアの民主化運動が衝突に発展して以来、米国がアサド政権を攻撃したのは初めてだ。トランプ氏はアサド政権の存続もやむを得ないとの前提で、反アサド政権の過激派組織「イスラム国」(IS)への攻撃をロシアと連携して続けてきた。「米国は世界の警察官ではない」と述べていた立場からすれば、大きな転換である。

 ミサイル攻撃はトランプ氏が毅然(きぜん)とした態度を示して米国の権威の挽回を狙った性格がある。13年夏に化学兵器の使用で多くのシリア市民が犠牲になる中、オバマ大統領が軍事介入を警告しながら見送ったことは「弱腰」と批判され、ロシアや中国の拡張主義的な活動を促したと指摘する軍事専門家もいる。

 問題は、今回の攻撃を受けてどう和平協議のプロセスを進めるかのシナリオが見えてこない点だ。アサド政権は化学兵器の使用を認めていないし、同政権の後ろ盾であるロシアは米国のミサイル攻撃に猛反発している。シリア情勢で協調の動きが見えてきた米ロが、短期的には対立局面に陥りそうだ。トルコやイランなど重要な影響力を持つ国も、米国の方針変更に驚いているはずだ。

 外国勢力がシリアに特定の政権を押し付けられないことは、03年に米国が「民主化」を大義の一つとして始めたイラク戦争の失敗で明らかだ。しかし和平協議に米国が本腰を入れなければ、中東や欧州に避難した数百万人のシリア人が帰国できるような永続的な平和は実現しない。

 トランプ氏はこの攻撃に合わせて、米国が描く和平協議のたたき台を示す必要があったのだが、7日の声明では触れなかった。ティラーソン国務長官も同日、「シリアの将来は和平協議に委ねる」との原則を繰り返した。

 ティラーソン長官は近くモスクワを訪問する。ロシアとの協議では、アサド政権と反体制派をどう協議のテーブルに着かせるのか、和平案はどうあるべきかという点を真剣に話し合ってほしい。それができなければ、今回の攻撃は米国のメンツのためであるという評価になってしまう。

 今回の攻撃は、核ミサイル開発をエスカレートさせている北朝鮮に対する「警告」の意味も持つ。イラク戦争という米国の軍事行動を見て北朝鮮が6カ国協議など対話に向かった前例もある。だが、北朝鮮問題でも、トランプ政権から聞こえてくる攻撃の脅しだけでは不十分だ。核ミサイル問題の解決に向けた具体的道筋を考えてもらいたい。

2017年4月8日 無断転載禁止