小林一三の教え

 上京した折に時々、横浜まで足を運ぶ。渋谷の駅から約30キロ、30分前後。電車の本数が多く、路線も複数あり、時刻表を見なくていい。運賃も私鉄を使えば片道300円を切る。車ではないため軽く一杯も可能で、財布のひもも緩む▼ほぼ同距離の大阪・神戸間も同様。都会とは条件が違うとは言うものの、つい距離が似た松江・米子間と比べてしまう。所要時間は差がないが、本数が少なく運賃も割高に映る。特に乗車券だけで乗れる列車は意外に少なく、結局マイカーに頼る▼人が多い都会は往来がどんどん便利になる一方、人口の先細りに悩む地方は人の往来も制約を受ける。しかし逆ではないのかと思う。人が少ないからこそ往来しやすくして人やおカネの巡りを促さないと、負の連鎖からは抜け出せないだろう▼出雲に続き松江、米子はちょうど市長選の時期だ。中海圏域を束ねて人の往来を促す、例えば松江・安来・米子・境港を公共交通でスムーズに結ぶ「環状網」という発想での連携も、この機会に論議してほしい▼公共交通機関を巡っては、よく鶏が先か卵が先かの論議になる。ただ阪急電鉄を創業した小林一三は「乗る人がいなくて赤字になるなら、乗る客を作り出せばよい。それには沿線に人の集まる場所を作ればいいのだ」と言ったと語り継がれる▼旧国鉄の分割民営化から30年。地域との距離が縮まったJRにも、不採算路線の廃止だけでなく、そんな発想の転換で一歩前に踏み出してほしい。(己)

2017年4月11日 無断転載禁止