7年ぶりの甲子園

 あの打球は7年が過ぎた今も忘れられない。2010年夏の甲子園。1点を追う開星高校の九回裏の攻撃。2死一、二塁、長打が出れば逆転サヨナラの場面。糸を引く鋭い当たりが左中間に飛んだ。誰もが抜けたと思った瞬間、左翼手が横っ跳びで好捕し試合は終わった▼放ったのは当時、同校野球部3年だった阪神の糸原健斗選手=雲南市出身。試合を優位に進めながら、味方の落球で逆転を許した直後の打席だった。「誰が悪いわけではない。負けたのは力不足だった」。主砲として全てを背負った▼高校時代に指導した野々村直通さんは、その姿勢を「求道者」に例える。練習試合で納得ができない打席に終わるとわずかな時間を使い、ベンチ裏で打撃練習を繰り返したという▼身長170センチ強の小柄な24歳。卒業後はアマ名門の明治大とJX-ENEOSに進み、体格差をこつこつ努力することで克服しプロから注目される選手になった▼昨秋ドラフト5位で阪神に入団。球団の新人内野手として13年ぶりに開幕1軍入りし「満足はしていない。これがスタートになる」と語った。1日のデビュー戦はサヨナラ負けにつながる失策を犯したが、翌日は初安打を放った。差し込まれても振り抜きしぶとく中前にはじき返す。糸原選手らしい気迫の一打だった▼かつて全てを注いだ甲子園を拠点にする球団に入ったのも縁かもしれない。今季甲子園開幕カードとなる巨人との「伝統の一戦」が始まった。最後の打者に終わった7年前の続きが始まる。(玉)

2017年4月10日 無断転載禁止