新聞の機能を認識しよう/活字の優位性を活かそう

 ふるさと島根定住財団顧問 藤原義光

 毎朝、新聞のお世話になるところから一日が始まる。新聞の宅配制度は世界的にも稀有(けう)と聞くが、とてもいい制度だと思う。毎日、風雨や雪にもかかわらず未明から配達する配達員の方に感謝する。寝床で読んで、日によってはまたうとうとしてから起床するが、それは配達員からの賜物(たまもの)である。雨や雪の日にはわざわざビニールで梱包(こんぽう)してもらっている。こんな気配りも、寒のする雪が吹きつける暗いうちからのバイクでの仕事にも、甘えが許されない厳しい任務だと思い敬意を表する。

 読者はこれに応えて、しっかり読むことがその地味な仕事に報いることになろう。

 新聞社も日々いい紙面づくりで応える必要がある。そこで、新聞の「ヘビー・ユーザー」を自認する者として新聞週間のスローガンにあった覚えのある「読者とともに歩む新聞」「常に時代をリードする新聞」の言葉を真に受けての要望をいくつか申し上げる。

 まず、新聞の機能を考えるに(1)出来事や事件事故、その他の情報を正確、迅速に伝える(2)それをわかりやすく解説したり、分析したりする。物事には多面性があるとの視点も欠かせない(3)世の進むべき羅針盤(4)光の当たらないことや、見過ごされている大事なことを世に出す。これは「一遇を照らす」ともいう。

 このほか(5)市民の立場から権力を監視する(6)繰り返し読んだり、深く考えたりするきっかけを読者に与える(7)切り抜きなどでの情報の保存機能(8)教養、娯楽を提供する(9)催事案内や読者の情報交換の場を設定する-。思いつくままに挙げたが、これだけ多面的な機能を持っている。

 スマートフォンなどの普及で、学生や若者の新聞離れが言われて久しいが、これだけの多面的な機能を、しかも受動的に受けられるのは新聞ならばこそだ。前回は「もっとテレビを見なさい」と社会に目を向けることの重要性を指摘したが、スマートフォンではこれは得られない。私が採用担当ならば、面接試験でいろいろな質問を重ねる中に一番のポイント「新聞は読んでいますか」をまぶしておき、それに対する回答で最も本質的な人物評価をするだろう(実際そうしてきた)。

 社会人として必要な能力に「想像力・創造力」「積極性・好奇心」「教養」「雑談力」などが挙げられるが、これを得るのは実体験によって磨かれる感性と読書や新聞などの活字、テレビで得る知性だ。

 井上ひさしに「難しいことをやさしく、やさしいことを深く、深いことを愉快に、愉快なことをまじめに」との名言がある。以前「明窓」でも紹介された。この言葉を紙面づくりの基本におくべし。

 第2、新聞の使命である「権力の監視」は時代が変わっても不変だ。第3、インターネット時代にあってそれに対抗しうる機能を果たすこと。それは活字だからこそ、紙だからこその利点を活(い)かすことだ。使命を終えた、単に埋め草的な記事はないかの点検も必要だ。

 第4、中央の識者からの評論で、現場では既に承知しているが諸般の要因でなかなか実現しないことを啓蒙的教条的に言われていると感じることがある(もちろん外部からの意見・提言は傾聴すべきだ)。第5、地元に密着してこその地方紙だから、地元の人材や読者からの寄稿・投稿には大いに期待する。しかし、「朝起きて顔を洗って、ご飯を食べて」的なコラムにならないことだ。第6、現場を取材した記事の「見出し」が画竜点睛を欠くものでは大きな誤解を与えかねない。常に細心の気配りが必要だ。

 新聞はインターネットや週刊誌との競合の中で読者に講読してもらわなければならない。事象に鋭く切り込むものであってほしい。「テレビの番組欄が見たいから」や古紙の材料として購読するものではない。これは嫌みではなく期待を込めてのエールだ。

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 ふじはら・よしみつ 岡山大卒。1972年、島根県職員採用。総務部市町村振興室長、財政課長、浜田総務事務所長、地域振興部長、教育長などを歴任。2010年7月、ふるさと島根定住財団理事長に就き、16年7月から同財団顧問。

2017年4月10日 無断転載禁止