熊本地震1年/震災対策の抜本見直しを

 熊本地震から14日で1年。安倍政権は地元自治体の要請を待たず食料など必要な物資を送る「プッシュ型支援」を実施するなど積極的な対応を見せた。後手に回っていないという印象を与えることには成功した。

 だが今の災害時の仕組みでは、南海トラフ巨大地震や首都直下地震といった桁違いの広域大規模災害に対応できないのは明らかだ。この現実を見据えた上で、「防災省」を創設するなど、震災対応を抜本的に見直す本気のリーダーシップを期待したい。

 プッシュ型支援については、行政に物資を配送するノウハウがなく当初は混乱も見られた。災害が起きた直後から専門の物流業者を活用する仕組みを整えておけば、もっとスムーズに届けることができただろう。

 ただ広域災害が起きた場合は、他の地域から支援は期待できない。行政だけでなく企業や家庭でも1週間分以上の物資の備蓄を標準としたい。

 熊本県益城町など小規模な自治体では、避難所の運営や建物の被害判定、仮設住宅の整備などに職員だけで対応できなかった。熊本県や熊本市でも、受け入れた国や自治体職員との仕事の分担などで混乱があった。

 この点からは、応援に来た職員に、どのような仕事をしてもらうのかなどを盛り込んだ「受援計画」をあらかじめ策定しておくことが有効だ。

 災害対策基本法では、住民に一番近い市町村が応急対策の中心的な役割を担うとしている。だが、大規模な地震や水害の対応は、職員が少なく経験も乏しい市町村単位では難しいことが熊本地震でも裏付けられた。

 経験やノウハウの蓄積が重要であることを考えれば、都道府県や国が今以上に前面に出る仕組みに改めるべきだ。

 1995年の阪神大震災以降、米国の連邦緊急事態管理局(FEMA)を参考に、防災対応の中心となる国の機関を強化するよう言われてきた。次に備えるためにも、防災省の創設を具体的に検討すべき時期に来ていないか。

 防災対策では長期的な視点も重要だ。南海トラフ巨大地震などの被害を、発生時に対応できる程度まで軽減しておく必要がある。そのためには安全・安心なまちづくりが不可欠となる。

 具体的には、約2千あるとされる活断層の真上やその周辺に住まないよう土地利用を制限する手法も考えられる。大津波の被害を受ける可能性のある沿岸地域では、建物の安全性を高めた上で地下街の浸水防止対策の充実に取り組むほか、高台など安全な地域への移転も誘導すべきだ。

 急速な人口減少社会に入って、安全な地域の土地に余裕がある。安全・安心のためにも、東京など大都市への人口集中を是正するという新しい防災戦略を実行できるタイミングでもある。

 2015年に仙台市で開かれた第3回国連防災世界会議は、国際行動指針「仙台防災枠組」で「より良い復興」を提唱した。熊本県も「創造的復興」を打ち出している。元の形に戻す復旧ではなく、今後の地域の発展も考えた対応が必要だ。震災後に慌てて復興計画を作るのではなく、各自治体が被害想定に基づきアウトラインを事前に検討しておくことも考えるべきだ。

2017年4月14日 無断転載禁止