田舎のおもしろさ

 先日、出雲市佐田町の山腹にある古民家を訪ねた。島根大名誉教授の有馬毅一郎さんの生家で、庭や畑に植えたクリスマスローズ3千株が見頃を迎える時期に開放している▼築125年の母屋は1975年7月の集中豪雨で空き家になった。有馬さんの母は、家の前の川にかかる橋に引っかかった流木を取り除こうとして濁流に巻き込まれ、助けるために飛び込んだ父とともに流されて亡くなった。以来、松江市に暮らす有馬さんが管理を続ける▼2千坪ある敷地の草取りは難儀な作業。きれいに草を刈り、花の苗を植えても、山の斜面を利用した畑では、イノシシが苗を掘り起こす。あちこちに「イノシシさんやめてください」などの札が立ててある。思わずクスッとほほ笑んでしまうが、地元の人には死活問題だろう▼それでも、里山の春は格別の色と香りがあるように思う。有馬さんが5年前に生家の開放を始めたのは、「田舎は大変なことが多いがおもしろい。田舎を知って、考えてほしい」との思いからだ▼お膳には近所の人が作ったヨモギ、フキノトウの天ぷらや、梅の煮物、葉ワサビの粕(かす)漬けが並んだ。近所づきあいの茶請けやおすそわけで振る舞われるうちに、味付けに工夫が重なってできた地域の味なのだろう。田舎の料理がおいしい理由の一つだと思う▼時に厳しい自然と共に生きてきた人々の営みとつながりで地域ができていることを改めて思い知る。人口減少と高齢化で心もとないからこそ田舎の味や風情をもっと感じたい。(衣)

2017年4月14日 無断転載禁止