永遠の無理難題

 戦国武将の石田三成が世に出るきっかけは、鷹狩(たかが)りの途中で休憩した秀吉に出したお茶だった。喉の渇きを癒やすため最初はぬるめに、次から熱くたてられた茶に、秀吉は感心した▼そんな人間的心遣いが、人工知能(AI)開発では壁になるという。AIは膨大なデータを記憶し瞬時に取り出せるが、「汗だくで暑い(熱い)秀吉に出すお茶は」という問いには、「熱い」と「飲み物」を拾い、「熱い飲み物」を選ぶミスもする▼将棋や囲碁の世界では、AIの棋力は侮れないが、AIロボット「東ロボ君」で東大入試に挑戦中の数学者、新井紀子さんは「総合的にはまだまだ人間には及ばない」という。例えば、スマホの検索機能。これも弱点だらけだ▼地名と「おいしい、イタリアン」と入力すると店名が表示されるが、これを「まずい、イタリアン」と入れても同じ店が出る。ネット上の文章を探り、組み合わせが多い単語を探しているだけで、おいしい、まずいの評価をしているわけではない▼「将来、仕事の半分がAIに置き換わる」と予言する新井さんだが、それは記憶力が重視される仕事。東ロボ君も、人間だと普通に推測できる「書かれていない気持ち」までくみ取ることは苦手で、合格レベルに届いていない▼言葉がなくても顔色をうかがい、あうんの呼吸で人は生きている。機械が自ら考え行動する知能を得るのはかなり先のことだろう。偉い人の心中を「忖度(そんたく)する」など、純真な機械には、永遠の無理難題なのかもしれない。(裕)

2017年4月15日 無断転載禁止