カジノ解禁/依存症問題に対策を示せ

 カジノを目玉とした統合型リゾート施設(IR)の整備に向け、安倍晋三首相が本部長の推進本部で制度設計の検討が始まった。IRの区域内で刑法が禁じる賭博を例外的に認め、それにより海外の富裕層を中心に観光客を呼び込み、雇用の拡大や地域の活性化、国・自治体の税収増、ひいては経済成長につなげていくのが目的だ。

 制度設計の重要な柱は、何といってもギャンブル依存症対策だ。入場規制の徹底が求められる。また、反社会的団体のマネーロンダリング(資金洗浄)対策も不可欠だ。

 さらに、国などにカジノ事業者から入る納付金の使い道などについても国民の理解が不可欠だ。政府は有識者会議の議論も踏まえ、これらを盛り込んだカジノ運営基準を定める実施法案を秋の臨時国会に提出したい考えだ。

 大阪府をはじめ関係自治体による誘致合戦も熱を帯びてきている。昨年末に政府、自民党が国会会期を延長してカジノ法案を審議入りさせ、成立したが、一方でパチンコや競輪、競馬に多いギャンブル依存症のさらなる拡大、治安悪化への懸念は払しょくされたとはいえない。依存症の問題は十分に実態を調査して、対応するべきだ。

 国や自治体がカジノを経済成長の起爆剤にしようという発想は、各国で取り組まれている。カジノをはじめホテルや国際会議場、ショッピングモールから成るIRをつくれば、巨額の設備投資と雇用拡大、海外からの観光客増加によって地域が潤うなど多大な経済波及効果を期待できるという。

 例えば、大阪市と合同で人工島の夢洲(ゆめしま)へのIR誘致を目指している大阪府は、開発による経済効果を1兆3300億円と試算している。

 関連する雇用の創出は9・7万人、集客見込み2200万人程度、税収効果2500億円程度とする。さらに政府が2025年国際博覧会(万博)の大阪誘致を決めたことで、相乗効果にも期待が高まっている。

 そうしたプラス面ばかりが強調されてきたが、国会ではカジノ法成立までギャンブル依存症対策の議論は乏しかった。厚生労働省研究班が14年に簡易調査の結果、成人の4・8%に当たる536万人に依存症の疑いがあるとの推計値を示している。

 3月末、成人2200人を対象にした初の面接調査で依存症の経験が疑われる人は2・7%という結果が発表された。最もお金を使ったのはパチンコ・パチスロが最多だったという。国勢調査のデータに基づいて単純計算すると、だいたい280万人になる。ただし調査対象が大都市に偏っているとの指摘もある。

 また昨年1年間に全国で摘発された刑法犯のうち、パチンコが犯行の動機だったのは1329件、競馬や競輪は999件との統計もあり、依存症の正確な実態の把握を急がなければならない。

 自民党は、このような依存症対策の基本計画策定を政府に求める法案を議員立法で5月にも国会に提出する。警察庁もパチンコの出玉規制の基準見直しを検討する方針だという。だが、それらがカジノ解禁に向けた条件整備であってはならない。依存症は侮れない問題だ。実効性のある対策を示さなければならない。

2017年4月16日 無断転載禁止