国連の集団安全保障/国際協調の理念再認識を

 島根大学名誉教授 牧田幸人

 世界の平和秩序をどう具現し、確立するか。この課題は、近代国際法から現代国際法への歴史展開を経て21世紀の現在に至るまで、今なお達成すべき「未完のテーマ」として実在する。

 だが、その背景と要因に関連して留意すべきは、この数世紀の間に戦争と平和の問題に関連して展開された、勢力均衡から集団安全保障への発展についてである。ここでは特に、国連創設70年を顧みて、国連の集団安全保障体制の意義と機能を概観し、多少の検討を試みてみたい。

 歴史的にみれば、集団安全保障は第1次大戦後の国際連盟時代に平和のための体制として初めて登場した。しかし、当時の国際関係の政治的現実の下で、体制上の脆弱(ぜいじゃく)性と限界性が顕在化し、機能不全に陥って挫折した。

 これを教訓に第2次大戦後の国連時代になると、集団安全保障の基本枠組み(憲章7章39条~51条)の下で、安保理の5大国(常任理事国)を中核に展開される、軍事的強制措置の発動をも可能とする強力な体制が構築された。

 この体制が実際にどのように機能し展開されたか、もし十全に機能し展開しなかったのであれば、要因や理由は何か。これが重要な検討課題だ。

 ところで、集団安全保障とは何か。多数の国家が集団的に相互間で国家の安全を保障することだ。対して国家が独力、または他国との同盟によって、外国に対して安全を保障することを個別安全保障という。

 歴史的には、世界の平和秩序の具現に向け、前述のように、一般国際平和機構としての国際連盟や国連の創設により、勢力均衡から集団安全保障へ発展的に展開してきた。

 国連の集団安全保障の特質は強制措置の発動にある。とりわけ、国際の平和および安全の維持・回復のため、非軍事的措置では不十分な場合、軍事的措置として加盟国との間の特別協定に基づき構成される「国連軍」が活動する。だが、実際には、国連創設以来、今日まで「国連軍」は実在せず、憲章規定はいわば「死文」のままで実効的でない。

 背景や要因については多々語られるが、主要には、戦後の冷戦秩序や大国間の利害対立・確執あるいは覇権争い、特に近年では一国主義・単独行動主義などによる、国際協調主義を基調とする平和秩序の構築に対する消極的・否定的な対応に起因するといえよう。

 さて、21世紀の近未来における平和秩序の具現や確立に向け、こうした現実の厳しい状況をどのように克服するか。そのためには、まず、20世紀における二つの世界大戦後に一般国際平和機構として創設された国際連盟や国連の基本理念を想起し、国際主義や国際協調主義・多国間主義の優位性や有益性を普遍価値として深く認識して尊重することが、少なくとも肝要だろう。

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 まきた・ゆきと 1942年生まれ。国際法学者。京都大法学博士。京都大大学院を修了し、鹿児島大、島根大大学院で国際法を担当。倉吉市在住。

2017年4月16日 無断転載禁止