故郷への思いと広報部

 「大人ぶって故郷を見下していた自分が恥ずかしい」。東京で営業マンとして働いていた7年前。島根県内の中学生から東京支社に届いたはがきに書いてあった言葉だ▼雲南市出身の吉田くんが活躍する人気アニメ「秘密結社鷹の爪」の映画公開に合わせて作った広告紙面。県内の名産や観光地を紹介し、鷹の爪の作者・小野亮さんが島根への思いを語った▼「都会のような娯楽はないが、何でもやれる環境にあふれ、東京から移り住んだ途端に、創作意欲が沸々湧いた」と小野さん。”何もない”島根はこんな時代だからこそ”贅沢(ぜいたく)な”県だとし「島根の人はそれに気づいていない」という小野さんの言葉が中学生に響いた▼自分自身、都会に憧れ、大学時代は東京で過ごした。友人から「島根って鳥取砂丘があるところでしょ」と言われ、見返したいと思ったのが帰郷を決めた理由の一つだ。その悔しさが、2度目の東京暮らしで広告紙面と一緒に作った自虐ポスターの「いいえ、砂丘はありません」のキャッチコピーになり、故郷への思いを強くするきっかけになった▼島根県が今春、全国唯一という広報部を新設した。溝口知事は「島根の良さをアピールし、U・Iターンにつなげる」と意気込むが、それも県民が故郷を誇りに思う土台があってこそだ。中学生のはがきは「島根にだけにしかない本当の良さに気づいた。島根に生まれて良かった」と結んであった。誰より強いであろう知事の思いが県民の胸に響かなければ広報部の成功はない。(添)

2017年4月18日 無断転載禁止